初ミュージカル『ミス・サイゴン』は超ハード! 本作への出演が大きな転機に
──ジャンルを超えたテリトリーでも、その都度、活躍されていますが、その後ミュージカルにまで進出されますね。
「ロックをやっているだけだと世界が広がらなかったかもしれませんが、バラエティに出ている姿を見た方が、“こいつ面白そうだな”とキャスティングしてくれたんでしょうね。なぜだか声がかかり、'16年にはミュージカルの最高峰『ミス・サイゴン』に出ることになっちゃって。
実は、役者にスカウトされたのは、40歳を過ぎたころが初めてではないんです。バンドでデビューした翌年の'87年に初スカウトされて、ハリウッド映画で主役を務めたことがあって、芝居もちょこちょこやってはいました。『TOKYO-POP』(トーキョーポップ )という映画で、アメリカ人の女の子とロックバンドのボーカルをしている日本人青年との交流物語。芝居も面白かったけど、当時は自分のバンドRED WARRIORSが全盛期だったから、ロック一本でやっていきたかった。
その後、その映画を見た人が呼んでくれることもあって、'04年にはソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』に出演することになったり。役者もやってきてはいますが、ミュージカルは未経験でした。
そしたら『ミス・サイゴン』の話が来て、実際に舞台を観劇したんですが、エンジニアという役を見たとき、“ああ、これは俺だ!”と思ったんですね。表現していることがめちゃくちゃロック。これはやりたいなと思って、オーディションを受けたら、散々な目にあいました(笑)。踊りはあるし、やらされる芝居も細かいんだよね。俺はまったくダンスを習ったこともないし、できないなと諦めましたよ。でも、“踊れる感じで舞台にいればいい”っていうことで、なぜか合格したんです。最初は軽い気持ちで“ミュージカルもいいんじゃない? 楽しみながらやりたいな”なんて思ってたけれど、とんでもない。まったく余裕がありませんでした。
エンジニア役は、酸いも甘いも知り尽くした人間で、狂言回しだから、ストーリーを動かしていかなくてはならない。3時間半ぐらいの舞台で、最後の30分に『アメリカン・ドリーム』を歌い上げる。それが見せ場なのに、それまですったもんだの芝居があって、しかも、舞台裏では自分で化粧したり、血のりまでつける。もう、休む暇もない。『アメリカン・ドリーム』を歌う場面が来るまでにへとへとになっちゃって。
稽古は2か月間びっしりあり、イギリスの演出家たちや出演者が、ベトナム戦争の歴史などを勉強する『サイゴンスクール』というワークショップも開かれました。この作品にかかわるすべてが、実に勉強になりました。大きな転機でしたね」
“成り下がり時代”や、理想と違う現実に悩まされながらも、自分らしく道を切り開いてきたダイアモンド☆ユカイさん。インタビュー第2弾では、ミュージカル出演を機にひと皮むけたあと、どのような日々を送ってきたのか、みっちり語っていただきます。
(取材・文/Miki D'Angelo Yamashita)
【PROFILE】
ダイアモンド☆ユカイ ◎ロックミュージシャン、俳優。1962年3月12日、東京生まれ埼玉育ち。'86年、伝説のロックバンド『RED WARRIORS』のボーカルとしてメジャーデビュー。人気絶頂期の'89年、わずか3年の活動で日本武道館公演を最後に解散。その後、「ダイアモンド☆ユカイ」としてソロ活動を開始。現在は音楽活動を中心に舞台・映画・バラエティ番組に出演するなど、幅広く活動中。私生活では'10年に47歳にして初めてパパになり、現在は1女2男の父。歴史やスイーツが好き。
ミュージカル・ショー『SEVEN-シンドバッド7つの航海-』
◎作・演出:三木章雄(宝塚歌劇団)
◎出演:中村嶺亜(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)/黒田光輝(少年忍者/ジャニーズJr.)/彩輝なお/彩乃かなみ/蘭乃はな/竹廣隼人/ダイアモンド☆ユカイ
【東京公演】2022年11月3日(木)~11月19日(土)@品川プリンスホテル クラブeX
【大阪公演】2022年11月26日(土)~11月27日(日)@森ノ宮ピロティホール
※公演詳細やチケット情報は公式HPへ→https://seven.sindibaad.jp/