香取慎吾さんはお兄ちゃんのように……
──そもそも子役を始められたのは?
「私、2歳のときに事務所に入ったんですけど、それは母の友人が赤ちゃん雑誌のモデルみたいなのに応募したら? ってすすめてくれて。小っちゃいときの写真が残ったらいいねっていう、記念のような軽い気持ちで事務所に入ったので、こんなに長く続くとは思ってなかったみたいです」
──幼いころって、まだ明確に自分の意志ではありませんよね。
「そうですね。ドラマや映画はオーディションがあるので、台詞をいただいて受けに行ってた記憶はあるんですけど。お仕事というとらえ方ではなくて習い事に行ってる感じというか。みんながピアノに行ったりとかしてる感じで、私はこれに行ってるみたいな認識でした。
あと現場に大人の方がたくさんいて、そこに交じって何かできるってことが、子どもにとってはすごく刺激的で楽しかったです。とにかく現場に行きたいっていう」
──そんななかで映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)といった、のちのち語り継がれる作品に出演してきました。池脇千鶴さんが演じたジョゼの少女時代は印象的でした。
「ありがとうございます。『ジョゼ〜』はこの業界の方で見ていらっしゃる方が本当に多いので、大人になってからも言っていただくことが多い作品です」
──月9では『西遊記』(2006年)にもゲストで出演されていますね。三蔵法師が深津絵里さんで、悟空が香取慎吾さんで。旅の途中で出会うチャイナ服の少女が菅野さん。
「悟空をちょっと騙(だま)そうとする、ウソをついちゃう役でした。懐かしいですね。
香取さんはとても気さくっていうか、たぶんみなさんが持たれているイメージそのもので。ゲストの私たちができている輪のところに入っていけるように、すごくケアしてくださって。本当にお兄ちゃんのように話しかけてくださった思い出があります」
「あと覚えているのは、スタジオにロケのような大きなセットが作られていて。ふだんの日常と違うことを味わえるのが、楽しかったです。大人の方たちのプロフェッショナルなお仕事を間近で見られる。
当時は私、メイクさんにも興味をもったり現場のいろいろな工程に興味があって、チームでひとつの作品を作ってるっていうプロセスに魅力的を感じてましたね」
──そこに目をつけるというのは、ちょっと変わった子どものような(笑)。
「そうですね。たしかにそうかもしれません(笑)」
──そうしたなかで、はっきりご自分の意思で、俳優を続けていこうと思われたきっかけは何でしょうか。
「要所要所でいろんな出会いがあったんですが、『いちばんきれいな水』(2006年)という映画でまるまる1か月ロケ撮影の期間があって、そのときに現場の楽しさを強く感じたんです。加藤ローサさんと姉妹の話で、本当にふたりで毎日撮影してたなっていう。
スタッフの方とも家族みたいになりましたし、すごく刺激的で濃密な1か月っていう感じで。子役を卒業してもこれをずっと続けていきたいなと、小学6年の年に思ったんですね。それが転機だったと思います」
「もともと子役の事務所で、大人になってもいられる環境ではなかったので、だいたいそこでみんな進路を決めるんです。俳優を続けるなら大人の事務所に移らなきゃいけないっていうことで、両親とも話をして。中学校に入るタイミングで学業に専念する選択肢も考えたんですけど、やっぱり仕事はやりたいと伝えて。
そこから母が一緒に事務所を探すのを手伝ってくれました。で、アミューズさんの面接に行って、って感じです」
19歳のときには是枝裕和監督が脚本・演出・編集を手がけたドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(2012年)に出演。女優を続けるかたわら法政大学に学び、交換留学で韓国に渡ったのは前述したとおり。ソウルの名門・延世大学で韓国語と英語を学んだ。
『ゴーイング マイ ホーム』で共演した阿部寛とは『下町ロケット』(2018年)で、江口のりことは『SUPER RICH』(2021年)で再会を果たした。これからも出会いを重ねていくに違いない。
(取材・文/川合文哉)
《番組情報》
『PICU 小児集中治療室』
フジテレビ系 月曜 午後9:00〜9:54
出演:吉沢亮
安田顕 木村文乃 高杉真宙 高梨臨 菅野莉央
生田絵梨花 中尾明慶 菊地凛子
松尾諭 正名僕蔵 野間口徹 甲本雅裕 イッセー尾形 大竹しのぶ
脚本:倉光泰子
《PROFILE》
菅野莉央(かんの・りお) 1993年9月25日生まれ。埼玉県出身。身長162cm。子役として2歳からキャリアをスタートさせ、2002年公開『仄暗い水の底から』で映画初出演。『ジョゼと虎と魚たち』『世界の中心で、愛をさけぶ』『いちばんきれいな水』『悪の教典』『生贄のジレンマ』などの映画、NHK連続テレビ小説『風のハルカ』、大河ドラマ『風林火山』、『ゴーイング マイ ホーム』『下町ロケット』などのドラマに出演。近年の作品に『エロい彼氏が私を魅わす』(FOD)、『SUPER RICH』(フジテレビ)、映画『わたし達はおとな』など。
撮影/矢島泰輔
スタイリスト/九(Yolken)
ヘアメイク/木内真奈美(Otie)
衣装協力/RE SYU RYU ジャケット80,000円 パンツ52,000円(税抜)