TikTokでバズったある動画。創作に興味があった子ども時代
――SNSの活動も'21年4月ごろから始めたんでしょうか?
「そうです。もともと前職で雑貨・美容品などの店舗づくりとかポップづくりをしていたんですよ。それが好きだったんで、ガチャガチャの製品をTikTokで魅力的に見せてみよう、と思って、発信し始めました。
そうしたら序盤のほうで『魚ンパクトミラー』っていう魚の骨型のコームを紹介する動画がバズって、一気に5000人くらいフォロワーが増えたんですよね。コームとしては超小さいんですけど、逆に”前髪を直すのに便利”っていう理由で売れたみたいです。私の動画も、特に女子高生の子たちが見てくれましたね。
そこからはあれよあれよという間に、フォロワーさんが増えていって今に至ります。このあたりは前職のころの経験が生きているというか。“どうすれば、商品をよく見せられるか”を考えて発信するのが楽しいです」
――なるほど。ガチャガチャにハマる前から雑貨に対する感性が鋭かったんですね。それは子どものときから? 例えば創作とかしていたんですか?
「たしかに言われてみれば、部活は運動部だったんですけど、小学生のころからよく工作をしていました。超インドア派で、ひとりで木製のピンボール作って遊んだり……。あと高校生のときに、授業で描いた絵がなぜか美術の先生に刺さって、美術部でもないのに文化祭に展示したことがあります」
――すげぇ、ちなみにどんな絵だったんですか?
「いやなんか自分でもよくわからない“顔から花が生えた男”みたいな絵でしたね。なんで評価されたのかがマジでわからない(笑)」
――いやシュールすぎるでしょ(笑)。そのままガチャガチャの景品になってもおかしくないっすよ。
「そうなんですよ。思い返すと、小学生のときからヴィレッジヴァンガードの変な雑貨とか大好きだったんですよね。“何これ意味わかんねぇ。絶対いらねぇだろこれ”って思いながらも、なぜか欲しくなっちゃうっていう感覚は、ガチャガチャに近いものがありますね」
あまりに謎過ぎる「ガチャガチャの世界」
――「絶対いらねぇだろこれ」って気持ち、めっちゃわかります(笑)。やっぱり実用的な商品がある一方で、ガチャガチャ特有のくだらない商品もまだまだあるんですね。
「そうですね。動物モチーフの商品はシュールなのが多いです。例えば『偽サファリ』っていう、黒子(くろこ)の人間が動物の上半身を着てるフィギュアがあるんですけど、マジでどういう気持ちで作ったんだよっていう。
それとネギを入れるためだけに作られた『ネギ袋』とか。これすごく売れたんですよ。どんだけターゲット狭いんだよっていう、この感覚がたまらないんですよね。
あと『マジでピンポンダッシュ』も好きです。インターホンがミニカーの要領で勢いよく走るんですけど……。確かにマジでピンポンダッシュではあるが、それが何なんだよっていう。無駄にカラーバリエーションあるのも腹立ちますね」
――(笑)。
「それと個人的にガチャガチャ界において革命的だったのは『壊して遊ぶ壺マスコット』と『マジで鬼のように割れる瓦』ですね。要するに両方とも"壊して遊ぶ"んですよ。200円払って、1回壊したらもう終わりっていう……。最高に意味不明で興奮しますね。でもこれもすごく売れたんですよ。売れるのがいちばんの謎なんですけど」
――すごいたくさん出てきますね、もう最高です(笑)。でも買っちゃうんですよね。
「そうなんですよ。壊した瞬間は"無の表情"になりますけどね。ただ、くだらなくてもほとんど買ってたんですけど、中にはあまりに理解できなさすぎて買わなかったのもあって……」
――え、何ですか?
「それが『石』っていう。シンプルにリアルな石を再現した個体なんですけど、なぜか小物入れになってるんですよ。筐体のパッケージに“石の中に小物が隠せる⁉”って書いてあるんですけど……いや隠さねぇよ、と。そもそも、どんな場面で石の中に小物を隠すんだよ、と。これはあまりに謎すぎて怖くなっちゃって買わなかったですね。
ちなみに同じシリーズで『かぷせるジャガイモ』もあります。こっちは筐体に“ジャガイモのフタを外すと小物が入っちゃう!?”って書いてあって、石以上に謎のメッセージでした。
でもこういうフレーズに注目しちゃった時点でわれわれの負けなんですよ。まんまと刺さっちゃってるわけですからね。この腹立つ感じが、最高に興奮しますね」
――やっぱり、ガチャガチャサラリーマンさん自身がもともと小物の販売を手がけていたから、製品開発側の視点でも想像できるのが楽しめるポイントなんじゃないですか?
「そうですね。謎な製品を見ると“これ大人が会議して決めたんだろうなぁ”って想像しちゃいますよね。“石、いいんじゃないですか? 小物入れの機能とかどうですか?”みたいな。いやどんな会議?っていう(笑)」