これが東急ハンズにあってもたぶん買わない

「株式会社バンダイさんの『影絵の手』です。意味不明ですが、光を当てるとしっかりと影絵が出現するので、なんか“おおーっ”ってなります。その謎の完成度の高さがたまんないっすね」(ガチャガチャサラリーマンさん)

――確かにガチャガチャの製品ってすごく面白いですが、そこまでずっと買い続けられるのはそれ自体が才能だと思います。どうしてガチャガチャにここまでハマり続けられるんでしょうか。

「まずやっぱり、ガチャガチャという“ランダム性”が楽しいんだと思います。ガチャガチャの商品が東急ハンズに売ってても、たぶんこんなに買わないです(笑)。

 どんなにくだらない商品でも、一応“これが出てほしい”っていう希望があって、外れるとなんとなく悔しいですし、希望どおりだったらなんとなく嬉しいですね。あくまでガチャガチャは雑貨店ではない。個人的には“テーマパーク”なのかな、と

――テーマパーク……。な、なるほど……。

それと単純に“飽きない”という部分はあります。ガチャガチャの新商品リリースのサイクルって、想像よりも早いんですよ。一度、各メーカーのInstagramの投稿を確認したことがあるんですが、月に300種類以上は商品が出ていました。’22年11月時点で来年2月まで新商品のラインアップが出てるくらい、新陳代謝がいいんです」

――そんなにサイクルが早いんですね! 次々に売れ筋商品が出てきそう。

「そうですね。ブームの移り変わりに注目するのも、ハマり続けられるポイントだと思います。最近だと“コアラのマーチ型リング”“ピュレグミ型リング”“おにぎりん具”みたいな、アクセサリー系の商品がすごく人気でしたね。

 それで新商品をチェックしていくと、メーカーごとに商品の特徴が違うことに気づくんですよ。個人的にはTAMA-KYUさんの商品が好きですね。毎回攻めたラインアップを発表するんで、売り場で見かけたら“まーた、わけわかんないの作ったなぁ”ってテンション上がりますね」

――メーカーにハマると、もうガチ勢ですね(笑)。

「毎回こっちの想像を超えてくるレベルの"謎商品"を作るので本当に脱帽ですよ。メーカーさんが尖(とが)り続けているから、ハマり続けられるのは間違いないですね。

 今後は私も自分で商品を作ってみたいな、と思っています。今までは買うことで楽しんでいましたが、売る側の面白みも体感してみたいです。わけがわからない商品を作って、それを買う人を見ながらニヤニヤしたいな、と(笑)」

“不必要”を愛せるというすばらしさ

 ガチャガチャの景品ほどユーモアにあふれたモノは、他にないのではなかろうか。なんてったって要らないものが多い。しかし「こんなくだらないもの、誰が買うんだよ(笑)」と心で爆笑しながら、100円を投入するという謎のパラドックスに陥ってしまう

 ひと言でいうと、ガチャガチャには「無駄」が詰まっている。「そんなわけのわからないモノを買うなんて、非効率的じゃないか」と思う方もいるかもしれない。しかし個人的には「不必要なものに情熱を注ぐ」という行為にこそ、真の豊かさがあるのだと思った

 だからこそガチャガチャをはじめ「つい無駄なものを買って部屋を散らかしてしまう方」は、反省する必要なんかない。むしろ「今日も余裕で生きてるぜ」と自分をほめてあげるべきだ。

 インタビュー中、ガチャガチャサラリーマンさんは「ガチャガチャでこんな盛り上がれるなんて、ほんっと平和ですよね」と笑っていた。その余裕あふれる姿勢にこそ、彼の魅力が詰まっている

(取材・文/ジュウ・ショ 編集/FM中西)