「僕が“実はジュノンボーイ”だってことを忘れ去られている感じがするんですけど……でも僕、今でも全然、“ジュノンボーイ”なんで!(笑)

 伊﨑​央登さん(38)は、2000年の『第13回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』で審査員特別賞を受賞。同じコンテストでグランプリを受賞した双子の兄・伊﨑右典(ゆうすけ)さんを含めた“ジュノンボーイ”出身の4人で、ボーイズグループ・FLAMEを結成した。’10年のグループ解散後は、役者業を中心に活動中だ

 そんな伊﨑さんが主演を務めるのは、12月7日より俳優座劇場で上演される、劇団TEAM-ODAC第40回本公演『舞台・破天荒フェニックス』。世界で約450店舗を展開するメガネチェーン『OWNDAYS(オンデーズ)』の社長・田中修治氏が書き下ろしたビジネス小説『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』が原作だ。本舞台は6月に初演を迎えた作品で、今回は2度目の主演となる。

 インタビュー第2弾では、芸能界入りのきっかけとなった『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』の話、役者の道へ進むきっかけ、双子の兄・右典さんとの特別な関係などを、ゆっくりと振り返ってもらった。

【インタビュー第1弾→ジュノンボーイをきっかけに芸能界入り!伊﨑央登さん主演『舞台・破天荒フェニックス』が上げる“反撃の狼煙”

『クローズZERO』との出会い。「ナメられたくないって気持ちしかなかったです(笑)」

撮影時は『OWNDAYS』のパーカーを着てもらいました! 撮影/伊藤和幸

この世界に入って、今年で21年目です。コンテスト(ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト)でグランプリをとった右典は、いわば大逆転やったんですよ。僕は2回目の読者投票の段階で結果が3位。編集部の人からも“央登くんは(最終選考に進むのは)確定だと思います”って電話をもらっていたんですけど、右典はそのときにギリギリ残れるかのラインで。でも、最終投票で右典が9位に入ったので、ふたりともファイナリストに残ることができたんです。

 コンテストの結果発表では、先に僕が『審査員特別賞』で名前を呼ばれたので、心の中で“ああ、右典(の入賞は)ないな”って思ってたら、まさかのグランプリ。当時の右典も、自分の名前を呼ばれたときは“え、俺!?”ってめっちゃ驚いた顔をしていたのを覚えてます(笑)。

 そのコンテストで審査員やったのが、伊藤英明さん(※1)。今でもめちゃくちゃお世話になってるし、可愛がってもらってます。当時の話をするたびに“俺が右典をグランプリにしたんだ”って言うから、右典も“あざっす!”みたいな(笑)。僕からすれば、なんで僕じゃなかったんですか! って感じなのに(笑)」

(※1)『第6回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』(’93年)の準グランプリ。

 央登さんは、FLAMEとしてアーティスト活動を続けていたところ、特撮映画『デビルマン』(’04年)で、主演・不動明/デビルマン役に大抜擢(だいばってき)。兄・右典さんも飛鳥了/サタン役で出演した。そのときの状況をこう語ってくれた。

「芝居の“し”の字も知らないまま現場入りして、那須(博之)監督に芝居のいろはを教えていただきました。いま振り返ると、そのときが一番つらかったかもしれません。当時FLAMEは全国ツアー中で、ライブが終わった後に撮影している現場へ直行し、ひとりでビジネスホテルに泊まって……。身体もでしたけど、気持ち的にキツかったなって思いますね。いきなりの主演だったからプレッシャーもエグいし、自分に芝居は向いてないのかなと思いながらやっていました

主演のプレッシャーに苦労するも、それを乗り越えるきっかけをくれた映画に出会う 撮影/伊藤和幸

 当時をそう回顧するが、今では立派な役者のひとり。演じることを楽しいと思わせてくれたきっかけとなったのは、映画『クローズZERO』(’07年)(※2)だったという
(※2)1990年〜1998年に『月刊少年チャンピオン』で連載された、高橋ヒロシによるヤンキー系マンガ『クローズ』が原作の映画。『クローズZERO』(’07年)、続編『クローズZERO II』(’09年)に、央登は極悪ツインズ2号・三上豪役で出演。右典は極悪ツインズ1号・三上学役で出演

もともと、『クローズ』が好きだったんです。映画化されることを知り、“これは出たい!”と思って、勝手に応募しました(笑)。右典と一緒に兄弟役で出させていただくことになったときは、めちゃくちゃうれしかった。1歳上の山田孝之、2歳上の小栗旬くんなど、役者の道で活躍している若手のメンバーが集まった現場で、僕と右典は、その中でも最年少。当時は役者の友達はまったくいなかったし、ナメられたくないって気持ちしかなかったです(笑)

 それに、僕たち不良モノが好きだったし大阪出身というのもあって、“この中の誰より不良の世界はわかっとるわ!”って思ってたりして。かなり生意気やったと思います(笑)。でも、そんな僕たちのことを三池(崇史)監督は面白がってくれたんです」

「続けたほうがいいよ、役者」苦手意識を“やめた”瞬間

 ふたりが演じるやんちゃな三上兄弟は、まさに適役だった。もともとは2〜3行のセリフしかなかったが、「もう少し撮影に参加してもらえませんか」と、撮影延長をお願いされたことも。そんな“監督に褒めてもらうことが多かった”という『クローズZERO』の現場で、忘れられない言葉をかけられる。

三池監督から、“続けたほうがいいよ、役者”って言ってもらいました。自信になったし、これまで芝居には苦手意識を持っていたけど、それはやめようって思えた瞬間でした。いまだに、(小栗)旬くんや(山田)孝之には、演技の相談に行ったりもします。あと、今でも仲よくしていただいている、やべきょうすけさんとの出会いも、この作品ですね。

 それこそ、やべさんには、初対面のときに挨拶をせずめちゃくちゃキレられましたね。もともと、やべさんが出演していた映画『岸和田少年愚連隊』(’97年)とかも見てたし、めっちゃ大好きだったんです。でも、当時はとにかくナメられたくなかったんで(笑)。でも、そんな初対面エピソードも今となっては美談になりました。やっぱり可愛いって、やべさんに言ってもらえたので(笑)

 そして今では、主演舞台を任されるほどに。そんな央登さんは、共演する若手からどんな印象を受けているのだろう。

『クローズZERO』のイメージが強いみたいで、若手には怖いって思われがちかもしれません。迷惑をかけないようにって、最初はちょっとだけ僕にビビってるというか(笑)。だから、稽古に入るときはいつも、そういう空気を崩していくところから始めています。怖くないって思ってもらうためには、どうしたらいいんですかね!?(笑)

 こうして気さくにインタビューにも答えてくれる央登さんからは、“怖さ”のカケラも感じられないので「そのままでいいと思います」と返すと、再び優しく笑った。

「しゃべるのが好きなんで、この時間もすごく楽しいです!」と語ってくれた伊﨑さん 撮影/伊藤和幸

永遠に、完璧にはならない。だからこそ、“役者・伊﨑央登”は歩みを止めない

 央登さんは自身のことを“おしゃべりが好きで、寂しがりや”だという。休日はどんな過ごし方をしているのか聞いてみると、

ゴルフに行くことが多いですね。コロナ禍ではやることもなくて家で映画を見る時間も増えましたけど、やっぱり身体を動かしたいなって。東京では友達を誘うけど、実家に帰ったら家族ともゴルフに行きます。平日だと7000円くらいでコースを回れるんですよ。飲み屋に行って使う金額と変わらないし、翌日、二日酔いになってゴロゴロしてしまうくらいだったら、朝早くから行くゴルフって健康的やなと思って。

 今は、右典と一緒に住んでいます。ふたりで一緒に住んだほうが家賃の負担も減らせるし、大きいところに住めるやん! ってことで(笑)。僕が右利き、右典は左利きなんで、冷蔵庫は真ん中が開くタイプを使っています。右側が僕、左側が右典って感じで。洗面台とかもそうやし、なんでもシェアできるのが双子のいいところかも。まぁ、靴箱の争いはあるんですけどね(笑)」

 イケメンの登竜門とも言われる“ジュノンボーイ”のコンテストから22年。最後に今後の意気込みを聞いた。

「“ジュノンボーイ”の双子から、FLAMEの双子、演技を始めてからは伊﨑兄弟と呼ばれることが多かった。死ぬまで役者をやったとしても、永遠に完璧にはならないと思ってるので、これからは“役者・伊﨑央登”を評価してもらうために、いろいろな経験を積み重ねていきたいですし、もっともっとスキルアップしていきたいなと思います

(取材・文/高橋もも子)

【PROFILE】
伊﨑央登(いざき・ひさと) ◎1984年5月生まれ、大阪府出身。2000年、第13回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで審査員特別賞を受賞し、翌年、グランプリの伊﨑右典らと4人でFLAMEを結成しデビュー。'04年に映画『デビルマン』で演技未経験ながら主演に抜擢され、『クローズZERO』('07年公開)『クローズZERO II』('09年公開)では極悪ツインズ2号・三上豪を演じる。'22年6月の『舞台・破天荒フェニックス~いつだって始まっている~』および、同年12月より再演される『舞台・破天荒フェニックス』において主演を務める。

劇団TEAM-ODAC 第40回本公演「舞台・破天荒フェニックス」

原作 : 田中修治「破天荒フェニックス オンデーズ再生物語」(幻冬舎)
脚本・演出 : 笠原哲平(TEAM-ODAC)
主演 : 伊﨑央登

◎公演日程
2022年12月7日(水)〜12月11日(日)

※公演詳細やチケット情報は公式サイトへ→https://teamodac.net/news/?p=4366