ディズニーの世界観を守りたいがために"学級会"が開催される

――なるほど。“ファンサ(ファンサービス)”という文化が浸透してきたんでしょうか。さすがにアイドルのライブのように“投げキッスして!”的なうちわを持ってる人とかはいないんですか?(笑)

「さすがに見たことないですね(笑)。ただ、ちょっと違いますが、ランド内で男性アイドルグループのメンバーのうちわを持ってきて、一緒に写真撮っている人はいました。それは賛否両論でしたね“みんな非日常を楽しんでいるのに現実のアイドルを出すのは違うのではないか”という論点で、ちょっと物議を醸しました

――なるほど。確かにディズニーの世界観としてはNGなのかもしれないけど、楽しみ方は人それぞれではありますもんね……。

「そう。特にSNSが発達してからは、TDRオタクの中でよく議論が巻き起こりますね。われわれは“学級会”と呼んでいます(笑)

――学級会(笑)。

「TDRオタクは、もしかしたら株式会社オリエンタルランド以上に、ディズニーの世界観を守ろうと必死なのかもしれません。だからルール違反っぽい行動を見つけると、警察化してしまうというか……。一般的に“Dヲタ(ディズニーオタク)は怖い”っていう印象があるかもしれませんが、それは私が客観的に見ても事実だと思います(笑)

──みっこさん個人としては、どういったスタンスなんですか?

「もちろん、最低限のルールはありますので、そこは守ってほしいな、と。今まで老若男女誰もが安心して楽しめる場所であり続けてきたので……。例えば最近ニュースで報道された"下着ユニバ"みたいなことは許されない風潮はあります

 ただルールさえ守っていれば、相手の楽しみ方を何でも否定するのは違うと思います。さっき紹介したとおり、TDRはいろんな楽しみ方ができるので“パレード見るために長時間座るなよ”とか“レスばっかり求めて何が楽しいんだよ”とは思わないです。パレード好きの友達と行くときは、私も一緒に数時間待ちますしね」

――素敵な考えだ……。あらゆる楽しみ方ができるTDRオタクならではの心の広さな気がします。

「ただ、ぶっちゃけ好きなポイントが違うと、1日ですべてを楽しむことは難しいんですよ。確実に時間が足りないんです

 初めての方でやりがちなのが“アトラクションもパレードもレストランも全部楽しむぞ”と意気込んで、すべて中途半端になってしまったというケースです。TDRを本気で楽しみたいのなら“今日はパレードを見る日”“今日はアトラクションを回る日”という感じで、何かひとつにフォーカスしたほうがいいですね

 それ以上に楽しみたい場合は、ソロで行くことをおすすめします。ただ写真を撮りながらぶらぶら散歩しているだけでも、日ごろのストレスから解放されて、思い切り羽を伸ばしながら非日常を楽しめますから。

 気合い入れて耳のカチューシャをつけなくても、週末にディズニーの予定を入れるだけで、“よし、今週は仕事頑張るぞ!”と思える場所なので、もっとフランクに通えるオタクが増えたらいいな、と思いますね

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40年間、日本代表であり続けるテーマパークへのリスペクト

 みっこさんは普段、カメラを片手にひとりでパーク内を散歩するのが好きなのだという。その中で、思わぬ発見に出くわすことに快感を覚えるのだそうだ。それはわかる気がした。

 あれだけ幸福な空間は、日本中探しても他にない。誰もがニッコニコで、疲れを感じないくらい楽しい世界はない。だってほとんど年中花火が上がってるんだぞ。冷静に考えたら、どういうことだよ。最高すぎるだろ。

 個人的にはもう20年以上行っていないのだが、それはなんとなく、無理やりカチューシャつけて、無理やりスキップして自分を騙(だま)さなきゃいけないんじゃないか、と思っていたからである。いやしかし、みっこさんの話を聞くうちに、ひどくもったいない20年だったような気がした。

 結局、勝手に敷居を高くしちゃっていたのだ。東京ディズニーリゾートとは、きっと無理しなくても「いるだけで楽しい空間」なのだろう。そしてその背景にはキャスト、ダンサー、キャラクターたちのおもてなしの心がある。「唯一無二の世界観をついつい守りたくなる」というDヲタならではの姿勢は、40年間、日本を代表し続けたテーマパークへのリスペクトの表れなのだ

(取材・文/ジュウ・ショ、編集/FM中西)

〇みっこさんのTwitter:@mikko_20100518

〇書籍:『ひとりディズニー50の楽しみ方』