街の延長にして無意識のアート
そんな中、取材スタッフ一同が絶賛したゴムホースが。無造作な曲線を描くホースの下で、小さな雑草が一面に生える様子がジブリ映画『もののけ姫』に出てくる幻想的な森のようにも見えてきませんか……? 青と緑のコントラストが映えて、中島さんが大学時代に初めて撮った写真(本記事の写真2枚目)にも通じるものがあります。
ツイッターやインスタグラムでは、何もコメントせずにゴムホースの写真を投稿する中島さんですが、リアクションはあるのでしょうか。
「ゴムホースの写真を見てタイトルを付けてくれたり、タグ付けして広げてくれたりする人もいます。アメリカに旅行したときは、『いいね!』を付けてくれた現地の人と一緒に、ニューヨークのゴムホースを見て回ったことも」
ゴムホースの写真集も、インスタを見たオランダ在住の韓国人美大生がメインとなって作ったそうです。
撮影の際は、ゴムホースには触らず、気に入ったアングルを決めて、1枚撮ったらすぐその場を去るのを鉄則にしています。散水用のモノしか撮らないのもこだわりのひとつ。
「洗濯機などに備えつけているモノは形のパターンが決まりきっているので……散水用は使われたり置かれたりするたびに、使う人によって一期一会的に、違う形に変化するのが面白いですね。
街の景色とも似ていると思うんです。1週間前と今日で道が変わっているみたいに、ゴムホースは街の延長みたいなものだと思う」
「ゴムホースは地場産業みたいなもので、全国各地で製造されています。海がある町では広い範囲で水掃除が必要なので、ものすごい長さのゴムホースがあるんですよ」
ゴムホースを語らせたら右に出る者はいないと思うほどのトリビアを豊富に持つ中島さんですが、飽くなき探求心は尽きません。
「ホースの寿命ってどれぐらいか知りたくて、ずっと昔から買って、家で保管してるんです。使わずに置きっぱなし状態にして、耐久年度を調べています」