脚本を自分なりに解釈する作業がいちばん大事。マヌエラの生き様を伝えたい
舞台は第二次世界大戦直前の上海。暗い影を落とす時代のなか、この街で生きることの葛藤を描く人間ドラマが進んでいきます。
最初に台本を読んだときは、戦争の色合いが濃く、重いイメージがありました。でも時間をおいて読むと、マヌエラと、彼女を取り巻く国籍も環境も違う人々が時代の波に抗いながら生き抜いていく、その人間ドラマに演じがいを感じました。
マヌエラについては、台本を読んで自分が感じた第一印象をまず大切にし、そのうえで、資料などを参考にして深めていけたらと思っています。彼女の年表をさらったり関係資料を読んだりすることに重きをおくのではなく、脚本に書かれていることを自分なりに解釈していく作業が、役者としていちばん大切だと考えています。舞台はほかのキャストの方々と一緒に作っていくものですから、それぞれのキャストの方がどのようにアプローチをしてくるかで、マヌエラの演じ方も変わってきます。セリフも共演者の方々に影響を受けながら覚えていくタイプなので、稽古に入る前に固めすぎないようにしたいですね。
『マヌエラ』という作品のタイトルロールですから、彼女の生き様をきちんとお伝えしなければなりません。マヌエラと呼ばれた永末妙子さんは、薔薇(ばら)にたとえられるほどの品格と華やかさを放ち、当時の男性中心の社会にあっても激しく奔放に生きてきた。でも、その実は弱さを抱え、思いどおりに生きることができない境遇への悲しみ、その時代に生きる苦悩などで孤独に陥ってしまう。自分の意見をはっきりと言葉にして人に伝えることができる強さがありながらも、脆(もろ)さも秘めている女性だと思います。
スターダンサーという役どころですので、心にあるものを肉体の動きで相手にぶつけていく様も表現できればと。ダンスを通して自由を求めたマヌエラの心情を、お芝居を織り交ぜながら、より深く練り上げていくつもりです。近年までご存命でしたので、妙子さんのことを知っていらっしゃる方たちにも納得していただけるように役作りに励んでいるところです。
演出・出演の千葉哲也さんをはじめスタッフ、共演者のみなさんと一緒にマヌエラの世界観を作り上げていき、お客様に何かを感じていただける作品にしたいと思っています。ぜひ、劇場に観にいらしてください。
(取材・文/Miki D'Angelo Yamashita)
《出演情報》
PARCO PRODUCE 2023 『マヌエラ』
【公演概要】
東京:2023年1月15日(日)~23日(月)@東京建物Brillia HALL
大阪:2023年1月28日(土)~29日(日) @森ノ宮ピロティホール
福岡:2023年1月31日(火) @北九州芸術劇場 大ホール
【スタッフ】
脚本:鎌田敏夫/演出:千葉哲也/音楽:玉麻尚一/振付:本間憲一
【キャスト】
珠城りょう、渡辺大、パックン(パックンマックン)、宮崎秋人、千葉哲也、宮川浩
岡田亮輔、齋藤かなこ ほか
※公演詳細やチケット情報→https://stage.parco.jp/program/manuela/