「人に迷惑をかけてはいけない」は、本当だろうか?

──いしかわさん、こちらからの前日のリマインドが漏れており、申し訳ありませんでした。まさかの記事テーマに絡んだエピソードから取材がスタートしたことに、驚いています(笑)。

「本当にごめんなさい! マシになったほうではあるんですけど、私、電車遅延が起きるとパニックになりやすくて……。駅でわちゃわちゃと調べて目黒に向かっていたのですが、そもそも会社を間違えていたという。迷惑をかけて申し訳ないです」

──とんでもないです。今回の取材はまさに「迷惑」についても、ひとつのテーマとしてお伺いしたかったんですよ。日本では「人様に迷惑をかけてはいけない」という規範が強いですよね。

「確かに、そうかもしれないですね」

──普段から「迷惑をかけないように」と強く意識することが、実は日本独特の生きづらさにつながっているようにも感じるんです。いしかわさんは著書『ポンコツなわたしで、生きていく。』の中で「ポンコツ=悪ではない」「もっと人を頼っていい」と書かれていますが、“人に迷惑をかけないようにする”とは、どんなことだと考えますか?

「そもそも視点が違っていて、何を迷惑と感じるかは人によって基準が大きく異なると思っていますね。私が何かやらかしてしまっても、迷惑とは思わない人もいれば、迷惑をかけられるなんて絶対に嫌だと感じる人もいます。

 私が本当に迷惑をかけまくっている友達がいるのですが、その子に話を聞いてみると、私の“やらかし”もあまり迷惑だと感じていないようなんです。例えば、私がその子のグラスを割ってしまったときも“ゆきのおかげで、ずっとやろうと思っていた金継ぎ(きんつぎ)をやれたよ。ありがとう!”と言ってくれて。もちろんそれは彼女のやさしさではありますが、そんな風に、やらかしてしまっても、ポンコツエピソードがたくさんあったとしても一緒にいたい、一緒に仕事がしたいと思ってくれる人を周囲に増やしたいと考えています。自分の“ポンコツワールド”をつくるという発想です

──視点が逆なのですね。そもそも、いしかわさんはいつごろから、自分自身が「ポンコツかも」と思うようになったのでしょうか。

最初に違和感を感じたのは、大学時代に経験した飲食店でのアルバイトでした。朝6時には職場に到着しなければならないバイトだったのに、私は起きられず遅刻することが続いてクビになってしまって。そのときに少しだけ“私、ダメなのかも”と思ったのですが、朝の弱さは大学生によくある話ですから、深刻に心配はしていませんでした。

 人との違いが如実に現れたのは、就職活動のときです。私は就活がうまくこなせなかったんですね。どの会社の書類がいつ締切なのかもきちんと把握できなければ、面接にも遅刻して、“もう、なんかいいや”とあきらめてしまう始末でした。でも、それまで授業に遅刻・欠席していた学生は、多くがしっかりと就活をクリアしているのを目にして。そのときに、ポンコツというとかわいらしいですけど、自分に対して社会不適合者だと思ってしまいました

──就活の結果は、最終的にどうだったのでしょう。

「結果として、新卒でぬいぐるみ・雑貨メーカーに営業職として入社できました。でも、結局は営業職やその会社で古くから続く仕事のやり方が合わずに1年半で退職。その後は広告代理店でWeb広告のクリエイティブ職を1年半、Webメディアで編集とライター職を8か月ほど経験しました。

 その後は、ずっとフリーランスとして働いています。今はインタビューライターをメインに、エッセイストとして書籍やnoteの執筆、Z世代向けマーケティング会社の広報職、イベント登壇、コミュニティ運営を手がけています」

──ポンコツなわたしで、生きていく。というテーマで書籍を書くことに決めたのはなぜですか?

私の書いているnoteの中で、最も反響の大きなテーマだったからです。日々の失敗やポンコツエピソード、ポンコツなりに人生が楽になる考え方をnoteに書き記していたら、“読んでいたらすごく楽になりました”とか“ゆきさんみたいな考え方ができるようになりたいです”といったコメントがたくさんついたんですね。

 今の時代、毎日を生き抜くために頑張っている人がたくさんいると思います。私の話を書籍にまとめることで、頑張ってる人が肩ひじ張らずに生きられたり、ポンコツでも何とかなるかもしれないと思えるきっかけがつくれたらと思って、このテーマで書籍を出版することに決めました」

いしかわさん著・『ポンコツなわたしで、生きていく。 〜ゆるふわ思考で、ほどよく働きほどよく暮らす〜 』(技術評論社刊) ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします