ありのままの自分でいないと、あらゆる人に迷惑だと思う

──noteやSNSを拝見していると、いしかわさんは今、自分らしくありのままに生きているように感じます。ありのままに生きられるようになったのは、やはり数回のジョブチェンジを経て、現在の仕事が天職だと思えているからでしょうか?

「いえいえ、何か明確なビジョンを持って今日までやってきたというような、そんなきれいな話ではないんですよ。営業職が向いていなかったり、仕事がやりたい方向性と違ってたりと、嫌なことを回避し続けていたら、偶然できあがったキャリアなので

──そうだったのですね。とはいえ、嫌なことに正直であるのも、自分らしく生きる秘訣なのかなと思ったのですが、いしかわさんが「ありのままの自分」でいられるようになったきっかけはあるのでしょうか。

1社目を転職したときの経験が大きいように思います。1社目の会社は、勤務時間や上下関係、礼儀、服装に厳しいところだったのですが、私はできないことが多くてよく怒られていたんです。でも、2社目の広告代理店ではクリエイティブ職で高い自由度で働けたこともあり、パジャマみたいな服を着ていても怒られなければ、昼過ぎに出社する人もたくさんいた。環境を変えれば、自分のダメな部分もそこまでダメに見えないことに気がついたとき、このままの自分で生きられる方法を考えるようになりました

──「ダメな部分は直すべき」という風潮もあり、環境を変えようとする人は少ない気がします。むしろ、ありのままの自分を出すことに怖さを感じる方も多いように思うのですが、その点はどう考えますか?

「その点に関しては、お伝えしたいことが2つあります。

 まず、ありのままの自分でいないと、自分もまわりの人も不幸になると思うんです。例えば、時間を守ることがどうしても苦手な人が、自分にウソをついて待ち合わせに時間厳守する約束をしてしまったとします。もし時間を守れなかったら相手もガッカリしますし、そもそも自分も時間を守らなければならないプレッシャーで非常に苦しいはずなんです。これって双方が不幸ですよね。できないことがあるのなら、隠さずそのままの自分でいたほうがお互いに気持ちよく生きられると思います

 それから、“ありのままの自分でいることが怖い”に関しては、“怖い”の部分をもう少し具体的に言語化してみるといいのではないでしょうか。人間は未知のものに恐怖を感じるものですし、怖いことを書き出してみて言語化ができれば、恐怖心はなくなる気がします」

──その「怖い」の感覚に関しては、日本ならではの「空気を読む」文化も関係していると考えています。空気を読む必要がある中で、自分を出したら嫌われるのではないか。そう思って、怖さを感じている方もいるのではと思うのですが……。

「ああ、なるほど。空気を読んでもいいと思うのですが、それって幸せに近づくかというと、違う気がしませんか? 空気を読んだほうがいろんな人と無難に付き合えて平和だとは思いますが、好きな人と一緒にいることと同義ではないと思っていて

──どういうことでしょうか。

どういう人と一緒にいるときの自分が、いちばん楽しくて幸せか。ここが大事だと思うんです。自分という人間は周囲5人の平均でつくられると言いますが、空気を読み続けていたら、好きでもない人が周囲に集まってしまうかもしれません。好きなこと、嫌いなことをはっきりと言葉にしていたほうが、価値観の合う人と付き合えるようになるし、自分にとって快適な環境をつくることにもつながると思います」

“何が自分にとって怖いのか?”それを明確にするだけで、ありのままの自分へと一歩近づくことができると語ってくれた 撮影/吉岡竜紀