自分の人生は、選んでつくっていけるもの
──お話を伺っていると、いしかわさんは「好き・嫌い」「楽しい・楽しくない」といった自分軸をとても大切にされていると感じました。昔からそのようなスタンスだったのですか?
「激務だった広告代理店時代に、このスタンスが如実に現れたように思います。本当に文字どおり目が回るほど忙しく、同期含め多くの人が身体を壊してしまう職場だったんですね。そのときに、親同士が好き合って生まれてきただけのこの人生に特に意味などないのだから、会社に消耗されて身体を壊すのは意味がわからないなと感じてしまったんです。最大限ハッピーに生きないと損じゃないかと思って。そのことに気がついたとき、そもそもどうやって働くかも、どう生きるかも自分で選べるのだから、自分の軸を大切にしようと思うようになりました」
──自分の人生には、思っている以上に選択肢がある。そのことに気がついた、と。
「そうなんです。学生時代に親元で過ごした思考のままでいると、よくも悪くも世界が狭いままです。この会社でしか働けないとか、仕事だから頑張らなくちゃいけないと思いがちなのですが、別にその会社で働かなくたっていいし、仕事以外の方法でお金を稼いで楽できるならそれでもいいんです。
自分がどうあるかって、実は無限に選べちゃう。いいことも悪いことも、選んでいるのは自分なんです」
──なるほど。いしかわさんのように人生の選択肢の多さに気づくためには、どうしたらよいのでしょうか。
「自分の考えを人に話したり、どこかに書いたりして、一度自分の外に出してみるといいと思います。人に話す場合は、できるだけいろいろな人に聞いてみるのがポイントです。一度他者のフィルターを通してみると、自分の価値観が当たり前ではないことに気づきやすくなる。考えていることを紙に書き出すだけでも、理想と現実のギャップの差を埋めるための行動指針が見えやすくなります。
とはいえ、最後の決断は自分ですべきです。人に決めてもらうと、その結果に対して他責になって自分の人生を生きることにはなりませんから」
──とても勉強になります。ちょっと究極の質問をしてみたいのですが、いしかわさんは今、幸せですか?
「結構幸せだと思っていますよ。でも、ハングリー精神も強いので、自分の知らなかった世界をもっと知っていけば、さらに幸せになれるかもしれないとも、頭のどこかで思っていますね。この幸せがゴールじゃないと思ってるのかも。死ぬときが本当のゴールだから、そのときに幸せで、この人生は正解だったと思えるようこれからも生きていきたいです」
──最後に、読者にメッセージをいただけますでしょうか。
「取材冒頭の質問にもあったのですが、“生きづらさ”という言葉、最近少し乱用されすぎているように思います。もし今、“生きづらいな……”と感じているのなら、何に対して生きづらいのかをしっかりと見極めることが必要です。
例えば、私はADHDとHSP(※)を持っているので、人よりも大きな音や人目が苦手なんですね。その特徴を把握できていないと、私はずっと刺激にさらされて生きづらいまま。でも、特徴がわかっているからこそ、少しでも快適に暮らせるように対策がとれます。
※HSP:「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の頭文字をとった症状。生まれつき感受性が強く、敏感な気質もった人という意味で、日本人口の約15%~20%が該当するといわれている
生きづらい、嫌なことがある、ストレスを感じていることがあるのなら、それをそのままにしておかず、まずは何が原因なのかを言語化する。そして、それらをゼロにできるように、自分で考えて選びとっていけると、どんどん生きやすい世界を作っていけると思います!」
(取材・文/市岡光子、編集/FM中西)