たい焼きは、天然の焼き立てがいちばんおいしい

──せっかくの取材の機会ですので、米吉さんのお人柄やプライベートについても伺いたいのですが。ご自身のご性格をひと言で表すと?

人見知り……。人見知りだから、取材なんかだとすごくしゃべるんですよ。本当に仲のいい人って、しゃべらなくていい人じゃない(笑)。無言が平気な人が本当に仲のいい人だから、僕って人見知りだなって、すごく思います」

──そういう方だとは思いませんでした(笑)。取材者のこともすごく受け入れてくださいますし、サービス精神のある方だなと。

「だって、取材者を拒否したら、取材にならないじゃないですか(笑)」

──ありがとうございます(笑)。休日はどんなふうに過ごすことが多いですか?

「ボーッとしてるんですよ、ずっと。ボーッとね」

──趣味とかはないんですか?

「ほんと、無趣味な人間なので……。でも、歌舞伎役者は比較的お休みが少ないんです。毎月25日間公演があると、だいたい26日か27日に千穐楽で、次の舞台は翌月の2日か3日から始まるので、その間の28日~2日までの間にお稽古をするわけですよ。で、また初日が始まるというのを繰り返していますので。純然たる何もないお休みがあまりないんです。

 2020年から休演日が生まれたんですけれど、それまでは基本的には休演日という概念がなかったんです。だから、休演日は何をしたらいいかわからないんですよ(笑)。ちょっと買い物でも行くかとか、映画でも観るかとか、考えますけど。でも結局、もう月末だし来月の芝居の勉強をしようかなってことになるので」

──なるほど……。では、気分転換にすることはありますか?

「甘いものが好きなので、甘いものを食べに行きます」

──それはいいですね。特に好きなスイーツは何ですか?

手軽なものでいえば、たい焼きです。たい焼きって、天然と養殖があるの、知ってます?

──(笑)。それはどのような意味でしょうか??

鋳型にば~っと生地を流し込んで、あんこを乗っけて、いっぺんにたくさん焼くのが養殖。鉄の棒の先についた小っちゃい鯛の型で1個ずつ焼くのが天然なんです。でも今、天然のたい焼き屋さんは減ってきていて、人形町と四谷と麻布十番にあるのは天然物の有名なお店ですよね。僕は、やっぱり天然が好き。それも焼き立てがいちばんおいしい! 天然の鯛は鮮度が大事だからね(笑)」

──今、たい焼きの概念が変わりました。

「そうでしょ。だから、たい焼きを箱でドンッて、差し入れでいただくのもありがたいけど、やっぱり焼き立てをお店の前で食べるのがいちばん幸せ。可愛らしい鯛の中には熱されたあんこという、最も危険なものが入ってますから、心して噛みつかなくてはなりませんけど(笑)」

──お酒は飲まれないんですか?

「多少はいただきますよ。でも、飲んだ後の締めにラーメンを食べたりするのは、理解できないんです。僕はお酒をいただくと、甘いものが食べたくなるから。だから、恨めしいのは24時間開いているコンビニなわけですよ。お酒を飲んで判断力が鈍っているときに、プリンとか、シュークリームとか、季節のスイーツとか、ついつい買ってしまうから(笑)

 あとスイーツでおススメは、子どものころから嗜(たしな)んでいる、カステラに牛乳をかけたもの。1本食べきれなくて硬くなってしまったカステラも柔らかくなって、おいしくいただけます。試してみてください」

中村米吉 撮影/近藤陽介