映画や小説をどうやって歌舞伎にするか妄想して楽しむ

──ぜひ、試してみます。何かハマっているものはありますか?

今はよしながふみさんの『大奥』を1日1話無料になる漫画アプリで読んでいます。以前にドラマ版を視聴したりして、男女逆転の設定やあらすじは知っていましたが、あらためて最初から読むと史実がうまく漫画のストーリーに生かされていて、感心させられてばかりです。もうすぐ無料話数が終わっちゃうので、自分へのクリスマスプレゼントに全巻買いそろえようと思ってます。

 あと僕は歴史が好きで、ず~っと『信長の野望』シリーズのゲームをやってる。しかも何作か前の『信長の野望・創造』を。推し武将は今川義元なんで、仇である信長では絶対プレイしないの(笑)! 

 ハマっていることではないですけど、頭の中で妄想するのが好きで……映画を観るたびに、どうやって歌舞伎にするかっていうのを、ずっと考えるんですよ。例えば『アナと雪の女王』は、エルサが『レット・イット・ゴー』を歌い終わったところで、雪布を振りかぶせて、お城をバラして道具転換をするとか。そうすると、花道が使えるから、アナとクリストフがトナカイを連れて花道を来ると、スッポン(歌舞伎座の花道にあるせり上がりの仕掛け)から、雪だるまのオラフが出てきてしゃべる……って芝居が、幕外でやれる。なんてことを考えているのが楽しいんです」

──将来、米吉さん演出の新作歌舞伎を観てみたいです。

「ハハハ。『アナと雪の女王』は難しいかもしれないですけど。山本周五郎の時代小説の短編なんかは、もう歌舞伎になるものばっかりだなと思っていて。この話がいいな、この役がいいなとか、常に思っています」

──歌舞伎が本当にお好きなんですね?

「もちろんです! それに好きじゃなきゃ、続けていけない仕事じゃないかなとも思います。いろいろ割に合わないこともありますからね(笑)」

──これからいろんな場面で、米吉さんを拝見できる予感がします。

「見ていただけるように頑張りたいと思います。みなさんのお声でさらに活躍できる場面を増やしていただけたら! 応援してください!」

中村米吉 撮影/近藤陽介

(取材・文/井ノ口裕子)

《PROFILE》
なかむら・よねきち 1993年3月8日、東京都出身。五代目中村歌六の長男。2000年7月、歌舞伎座『宇和島騒動』で父・歌六の前名を継ぎ、五代目中村米吉を襲名して初舞台。2011年から本格的に女方を志し、歌舞伎役者として歩みはじめる。近作に、京都南座 三月花形歌舞伎『番長皿屋敷』お菊役、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』ナウシカ役など。2021年、第42回松尾芸能新人賞受賞。2023年3月4日~4月12日、IHIステージアラウンド東京にて上演の新作歌舞伎『ファイナルファンタジーX』ヒロインのユナウ役で出演予定。

●公演情報
『オンディーヌ』
【作】ジャン・ジロドゥ
【上演台本・演出】星田良子
【出演】オンディーヌ:中村米吉 ハンス[Wキャスト]:小澤亮太/宇野結也 水の精キラ(ベルタ):和久井優 水の精サラ(ベルトラン):佐藤和哉(篠笛) 水の精ユラ(貴婦人):白鳥かすが 水の精ダヤン(国王):加納 明 水の精トン(オーギュスト):我 善導 水の精セラ(ユージェニー):宮川安利 水の精の王(奇術師):市瀬秀和 水の精アリ(王妃):紫吹淳
【日程・会場】
愛知公演:2022年12月23日(金)~12月25日(日)ウインクあいち 大ホール
東京公演:2023年1月6日(金)~1月11日(水)東京芸術劇場 シアターウエスト
※アフタートークイベント開催! 詳細は公式サイトまで

【公式サイト】 https://artistjapan.co.jp/ondine2022-2023/
【公式Twitter】@aj_ondine