ダンスの「復権」を!
──玉野さんが俳優を目指した時代と比べて、現代の日本のショービジネスはどう変わりましたか。
「実は、ダンスやショーの興行が減っていることが気になります。僕の若いころはセクシーで色っぽい女性のダンサーが活躍するようなショーやそれを上演する劇場もありましたし、2000年代ごろまでダンスや歌をメインの出し物にするショーがありました。パリの『ムーラン・ルージュ』やニューヨークで上演されるレビューをイメージしてもらえればと。
ところが、ダンスのジャンルも多様化して、例えばシアター系のダンスを目指す人が昔より減ってしまっています。ただスキルを見せるのではなく、舞台の上で感情を表現できる、観客を楽しませるトップダンサーでも、知名度があまりないのが現状です。ダンスで舞台業界のスターに上りつめる存在が出てくれば盛り上がります。
昔に比べると日本のミュージカルはすごく充実してきて、歌える俳優さんも増えてレベルが上がっているのですが、上質な大人のショーがもっと見たいなあとも思っています」
──確かに、舞台に詳しくないとミュージカルよりもショーはちょっとわかりにくいと思われてしまうかもしれません。
「芝居だと役の名前で出ていますが、ショーは役者の本名で出演します。だから、その役者の本当のスキルが試されるのでこちらも緊張しますね。それに作品としても評価しにくいというか、きっちりした台本がない分、このシーンは誰が作っているんだろう? となって、作り手の評価にもつながりにくいのかもしれません。
ショーは衣装やセットでお金もかかるのと、ダンスホールのような空間も減って、大人数で稽古ができる場も限られている難しさもありますね」
──それでも、玉野さんが手がけてきた『CLUB SEVEN』のようなステージが、ショーのレベルアップに貢献してきたと思います。
「1980年代にブロードウェイで上演されていた『ソフィスティケイテッド・レディース(Sophisticated Ladies)』というミュージカルレビューがありました。『CATS』と同時代の作品ですが、これを観て感動して、振付家の方に会いに行ったこともあります。
やっぱり僕の脳裏には長年、そういった洗練されたショーへの憧れがあって、それをステージで形にしてきました。『CLUB SEVEN』で一緒に出演してきた仲間もおじさんになってきましたし(笑)、これからも新しいエネルギーを持った役者さんも迎えて、僕が経験してきたような芝居やミュージカル、そしてダンスを思う存分に表現できる公演を作っていきたいと思います」
(取材・文/大宮高史)
《PROFILE》
たまの・かずのり 山口県出身。国立宇部高専化学科卒業後、劇団俳協等を経てミュージカル・ライブ・ショーなどに数多く出演。脚本・演出・振付も手がけ、2009年には『THE TAP GUY』で第34回菊田一夫演劇賞を受賞。その他、2012年度ミュージカルベストテン振付賞受賞、2019年度ミュージカルベストテン演出家賞・スタッフ賞ノミネート。2021年『NEW YEAR’S Dream』(明治座)、2022年『ぐれいてすと な 笑まん』(明治座)などで演出・振付を担当し、トータルクリエイター公演『CLUB SEVEN』は2023年の『CLUB SEVEN 20th Anniversary』で20周年を迎えた。
●作品情報
『CLUB SEVEN 20th Anniversary』
脚本・構成・演出・振付:玉野和紀
出演:玉野和紀、吉野圭吾、東山義久、西村直人、原田優一、中河内雅貴、町田慎吾、上口耕平、中塚皓平、大山真志、香寿たつき、北翔海莉、彩吹真央、愛加あゆ、実咲凜音、音波みのり
2023年2月8日(水)~2月28日(火) 東京 シアタークリエ
3月7日(火)静岡 静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
3月11日(土)・12日(日)大阪 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
3月17日(金)埼玉 ウェスタ川越大ホールにて凱旋特別公演も開催
※出演スケジュールについては公式サイトにて
https://www.tohostage.com/club_seven