矢崎 『RRR』
ワサビを食べられるようになり、ミョウガを美味しく感じ、コーヒーで一息つくような大人になった今でも、結局ジャンクフードが好きだったりする。天ぷらを「塩でお召し上がりください」と言われても、天つゆにどっぷり浸けたいと思う自分がどこかにいる。
今年、映画館で『RRR』という3時間あるインド映画を観た。イギリス植民地時代のインドを舞台に、イギリス軍に捕らえられた少女を救う男と、イギリスの警察官が育む友情と闘いを描いたアクションエンターテイメントなこの作品は、まさにびしゃびしゃにつゆをかけられた天ぷらのような作品だった。濃い味で力強く僕の心の舌鼓を何度も鳴らした。
僕はアクション映画が正直苦手だ。ドカドカ爆発して情緒や風情を楽しめない人の為のものに思えてしまうからだ。顔だけで女を選ぶ下品な男のように思えてしまう。
しかし、この『RRR』は格好良すぎた。圧倒的な格好良さの前には、僕のお洒落気取りのアクション嫌いなど無意味だった。下品な男と思われても、この映画が好きだと叫びたかった。
例えば、漫画の好きな見開きを思い出してほしい。スラムダンクの桜木と流川のハイタッチだったり、からくりサーカスの勝と加藤が背中合わせで戦うシーンだったり、見開きはとにかくアツいシーンであり、ここぞという時に使われる。その漫画の見開きが『RRR』では3時間ぶっ通しで楽しめるのだ。心は常に揺さぶられ、脳が常に踊る。今年色々とお洒落な映画や暗い映画も観たが、それを全て踏み潰す3時間だった。
今年のベスト映画は『RRR』。個人的には、この時代に完全に勧善懲悪を突き通す感じも好きだった。