池田ビッグベイビー 『TITANE/チタン』
監督は『RAW 少女のめざめ』のジュリア・デュクルノー。
幼少期にチタンプレートを脳に埋め込む手術を受けた女性が主人公ということで、『RAW 少女のめざめ』のように、徐々に狂気に走っていくのかと思いきや、冒頭から狂気。痛々しい描写が続く。
「先端恐怖症の人は絶対に観ない方が良い」と友人から聞いていたが、そうでない自分も先端恐怖症になるのではないかというくらいの不快指数だ。
ただ作品としては本年観た中で比類なきほどに重厚な内容で、圧倒的な見応えと余韻をもたらしてくれた。
主人公の女性はもはや性別を超えて、別の生き物のように見えるレベル。
彼女が演じる「狂気」は圧巻だった。
だが、私がそれ以上の衝撃を食らったのは、むしろ男の「狂気」であった。
それは女の衝動的なものと違う、心の奥底に孕む暗澹たる「孤独としての狂気」であった。
去年の年末に長年付き合った彼女にフラれた私にとって、2022年は、孤独との戦いだった。
今でも誰もいない部屋に帰るのは何だか違和感があるし、5分に1回くらいは別れた時のことを考えて辛い気持ちになる。
だから尚更、愛する人を喪失した男の孤独は、気味が悪くも沈痛な思いにさせられた。
そして、女の得体の知れなさが、男が愛を注ぐ対象を不明瞭に感じさせ、その孤独は彼だけのものでないように思わされた。
その圧倒的な演技と秀逸な演出には、パルムドール受賞も納得である。
というわけで、孤独だった2022年のマイベストムービーは『TITANE/チタン』。
来年の今頃には、バカな恋愛映画なんかを選びたいと願うばかりだ。
良いお年を!!!
(文/わるい本田、矢崎、池田ビッグベイビー、編集/福アニー)
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