岩崎良美『タッチ』タイアップ6曲が令和のサブスクでも大人気！『おさるのジョージ』がつないだ細田守監督との“ご縁”も語る

デビュー曲「赤と黒」を引っさげて世界へ、本人も「大好きな曲」と太鼓判

　Spotifyランキングに戻ると、第4位に'80年2月21日のデビュー曲「赤と黒」がランクイン。当時、アイドルのデビュー曲といえば、可愛さをアピールできるような高音域が弾ける明るい楽曲が多い中で、岩崎良美は中音域の多いエレガントなポップスを歌っている。

「『赤と黒』は『東京音楽祭』に出場するための曲だったので、アイドル的ではなく、大人っぽくしたんだと思います。それで、国内大会を通って、世界大会にも出させていただいたのですが、ディオンヌ・ワーウィックやザ・スタイリスティックス、スペシャルゲストのコモドアーズなど錚々（そうそう）たる方々が出ていて、あとからパンフレットを見て驚きました。あまりの緊張でよく覚えていないんですよ」

「赤と黒」はデビュー曲とは思えないほどの高い歌唱力を放っていた

　作曲を手がけた芳野藤丸は、当時、西城秀樹のサポートバンドや、ロックバンドSHOGUNのギター＆ボーカルとしても活動してきたロックミュージシャン。筒美京平や馬飼野康二といった歌謡曲の大ヒット作曲家ではなく、芳野に1年目の初期3作「赤と黒」「涼風」「あなた色のマノン」を依頼するというのも、かなり異色のスタートで、それだけ岩崎の類まれな才能に賭けていたのだろう。

「芳野藤丸さんは、先日私のライブにいらして、今でも初期の歌を大切に歌っていることをとても喜んでくださいました。私はSHOGUNのファンでもありましたし、芳野さんのデモテープの歌がカッコよくてシビれてましたよ」

　ちなみに岩崎は、これまで何度かこの「赤と黒」をレコーディングしており、特にデビュー40周年となる'20年に発表した椿本匡賜プロデュースのアルバム『Chanter chanter chanter』に収録された「赤と黒2020」は、ピアノロック風のアレンジで一段と輝きを増していてカッコいい。

「私は、20周年のときも、30周年のときも、“この『赤と黒』でもう一度デビューしたい！”という思いでセルフカバーしているんです。それくらいこの歌が大好きです！」

ポニーテールに上品な金色のネックレスがとても似合う。「赤と黒」、みなさんもこの機会にぜひ聴き直してみては!?　撮影／北村史成

　考えてみたら岩崎良美は、アニソン歌手として全面的に活動してきたわけではないのに、『タッチ』『竜とそばかすの姫』そして『おさるのジョージ』と、いずれも大ヒットアニメに携わっているのが興味深い。

　その一方で、'80年代デビューのアイドルの中でも先陣を切って、オシャレで上質なポップスを歌ってきたが、それらのアルバムは名盤と言われつつ、どれもオリコンTOP10入りをしていない。ただ昨今、『タッチ』シリーズの人気や、次回大きく取り上げるシティポップ・ブームの再燃で、岩崎良美の楽曲はサブスクで数多く聴かれ始めている。こうした状況から、より幅広いアニメファンや音楽ファンを取り込んで、さらにリスナーが増えるような予感がしている。

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（取材・文／人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝）

【PROFILE】
岩崎良美（いわさき・よしみ）　◎6月15日生まれ、東京都江東区出身。姉は歌手の岩崎宏美。高校時代から芸能活動を始め、1980年2月に「赤と黒」で歌手デビュー。翌3月に開催された東京音楽祭国内大会でグランプリに輝き世界大会に出場、国際友好賞を受賞。「涼風」「あなた色のマノン」「愛してモナムール」「青春」などの楽曲でも高い評価を受けたほか、『スクールウォーズ』『花真珠』をはじめとするテレビドラマにも数多く出演。'85年に発表した20枚目のシングル「タッチ」は当時のスマッシュヒットにとどまらず、令和の現在でもカラオケランキングに上位に入るなど、幅広い世代に長く愛されている。現在、長寿アニメ番組『おさるのジョージ』で主題歌とナレーションを務めるほか、アルバムリリースやライブ活動、フランス語でフレンチポップスを歌唱するなど精力的に活動中。