フォルム、素材、形状……各社の歴史から見える、トイレの魅力

──あまり意識してトイレを観察したことがないのですが、トイレにはどんな種類があるんですか? 形状とか色とか素材とか。

「まず素材の話をしましょう。トイレはざっくり言うと、“陶器か、陶器じゃないか”に分けることができます。例えばTOTOやLIXILは、もとは衛生陶器の会社なので、陶器でトイレを作ってきた会社です。

 一方、パナソニック株式会社の『アラウーノ』をはじめとするトイレは樹脂で作られており、有機ガラス系新素材が使われています。今まで“トイレは陶器で作るものだ”という常識を覆した革新的なトイレが『アラウーノ』だったので、発売したときにワクワクしたのを覚えています。今も新作がどんどん出ていますが、個人的に好きなトイレですね」

──全然知らなかった……好きな形のトイレとかはあるんですか?

TOTOの『ネオレストNX』というトイレがあるんですが、陶器の質感を生かし丸みを帯びた形状になっているんです。ネオレストシリーズはTOTO史上最高傑作と言われているのですが、中でも『ネオレストNX』は、フォルムの曲線美やデザイン性を追求しています。“トイレは用を足せればいい”という認識から“極上のおもてなし”に昇華させているという意味で、一種の芸術作品です。値段はまあまあしますが、好きなトイレのひとつですね」

各メーカーごとのトイレの魅力を、筆者にもわかりやすく説明してくれた 撮影/伊藤和幸

──なるほど。『アラウーノ』は素材、『ネオレストNX』は形状と、それぞれ違った魅力があるんですね。

「そうですね。あとはトイレメーカーの歴史を調べてみると、また違った魅力が見えてきます」

──各社にはどんな歴史があったんですか?

「先ほど日本でウォシュレットを普及させた本村さんのお話をしましたが、実は1967年に伊奈製陶(現・株式会社LIXIL)が日本初のウォシュレット『サニタリイナ61』を発売していたんです。ところがあまり浸透せず、売上も伸びなかった時代がありました。

 その後、先述のようにTOTOが新しいウォシュレットを作りましたが、さらにその後、LIXILがおしり専用洗浄口とビデ専用洗浄口が内蔵されたツインノズルを発表します。対してTOTOはノズルを2本にするのではなく、1本のノズルを伸縮させることで用途を変えたり、パナソニックはノズルの素材をステンレスにしたり……。各メーカーが差別化しながら、シェアをとるために切磋琢磨し、プライドをぶつけ合う姿も見ごたえがあります」