返ってきた、赤塚先生からの意外なひと言
ぺーぺーのアシスタントが、あろうことか二日酔いで仕事に穴を開けるなんて、考えられない大失態です。
厳しいマンガ家なら、その場でクビを言い渡してもおかしくありません。
しかし、しいやさんから謝罪の言葉を聞いた赤塚先生は、あっけらかんとした顔で、たったひと言、こう言ったのです。
「許すのだ!」
なんと、バカボンのパパのごとき、神対応のひと言!
このとき、しいやさんは、“この人に一生ついていこう”と誓ったそうです。そして、そのときの思いのとおり、フジオ・プロ(フジオ・プロダクション)に足かけ12年も所属し、のちにチーフ・アシスタントを務め、赤塚先生に恩返しをしたのです。
ある経営コンサルタントはこう言っています。
「器の大きい上司は、ミスをした部下に対して“おとがめなし”を基本にしている」
ミスを悔やみ、反省している相手には、おとがめなしで十分なのです。
そういえば、ビートたけしさんは、たけし軍団のメンバーが約束の時間に遅刻してきたとき、まったく怒らなかったそうです。理由は「ここに着くまでの間に、自分から怒られるのではないかと思って生きた心地がしなかっただろうから」。
もう罰は受けたから、怒る必要はないというわけです。
自分よりも立場が下の相手がミスしてしまったとき、「許すのだ!」の精神で、おとがめなしにする。
考えようによっては、器の大きさを見せるチャンスですね。
※出典:『赤塚不二夫先生との下落合呑んべえ日記』(しいやみつのり著 小学館)
(文/西沢泰生)