健全な20代男子が一緒にいてセックスしようとしないのは、優しさではない

──二村さん、何か言いたそうですが……。

二村「ちょっとひどいことを申し上げていいですかね……。20歳の男の子が一緒に寝てセックスしなくてすんでいるのは、他でもやってるからでしょうよ

春美「ええーー! 私とつきあっているあいだは、そういうことはしていなかったと思います」

二村「僕は彼を見て話したわけじゃないし、決めつけてはいけないんだけど。たしかに、いまの若者は性欲そんなに強くないって説も聞きますしね。まあ、なんにせよ春美さんに対して彼はなんだか余裕があるんですよ。恋愛ゲームって余裕の取り合いになるでしょ。それに負けて“恋される側”じゃなくて“恋する側”になっちゃうと、負けたほうは振り回されている痛みを感じたくないから、脳からドーパミン(快感を得たり意欲を作ったりする脳内ホルモンのひとつ)が出て、ハマってしまう。それが悔しいけど気持ちいいんですよね。先天的なものかもしれないけど、とにかく彼は余裕というモテ要素がある

春美「そうだと思います。男の人なのに、すごく自分の弱い部分とかを自然に話してくれるんです。そしたら“私が助けてあげたい”ってなっちゃうじゃないですか」

二村「近くにいる人に弱みを見せることって、人間にとって、すごく大事なことだと思うんですよ。ましてや身体の関係のある中で男性から弱みを見せられたら、それが2人っきりの場だったら、ぐっと来ます。モテるために意図的にやってるのか天然なのか、そこはわからないですが……。ただ彼は少なからず春美さんに甘えたかったんだろうなとは思います。ところで、なんで彼の浮気はバレたんですか?」

春美「家に泊まりに来ることが増えたので、合鍵を渡してたんです。そしたら洋服とか、どんどん運び込まれちゃって半同棲みたいな感じになったので、その関係に安心してしまって。彼が”今夜は女の子とちょっと飲みに行く“って言っても、”いってらっしゃい“みたいな、私も余裕を見せる態度でいたんです。そしたら夜中になっても帰ってこなくて、しつこく電話をしたらやっと出て、“今日は帰らない“って言われて……

二村「舐(な)められてるな。それは腹が立ったでしょ」

春美「結局、次の日は会社に行っても仕事が手につかなくて。家に帰ったら彼がいたので、昨日はどうしたのか問いただしたんです。そうしたら“すみません”って反省しだして」

二村「彼は“お母さんに怒られちゃった”みたいな気分になったんだろうね。何でもかんでも許してくれるお母さんが欲しいのに、怒ったりしたら普通の女と一緒ですからね。でも春美さんは彼のお母さんじゃないもんね」

春美「女の子とホテルに泊まったってシレッと言うからマジで腹が立って、“もう別れよう、明日になったら荷物を持って出てってくれ”って言いました。そしたら、そのときは向こうが“えー、別れたくない”みたいな感じだったんですけど。私もお別れかと思うと急に寂しくなっちゃって、寝る前に“やっぱり出て行かないでほしい”って伝えて、それで仲直りできたと思っていたんです。そしたら次の日に私が仕事に行っている間に荷物も全部消えて、いなくなってて(笑)

──その後、年下君はどうなったのでしょうか……。

二村「別れる原因になった、ホテルに行った女の子とはつきあってるんですかね」

春美「それが、つきあっているらしいんですよね……。バーで共通の知り合いから聞いちゃったんです。でも私は浮気を許してあげたのに、LINEのアカウントをブロックされてSNSも全部フォローを外されたんですよ!

二村「春美さんは何も悪いことはしてないですよ。でも、なんでそんなに避けられてるんだと思いますか? 」

春美「いや~、ちょっと怒りすぎましたかね」

二村「向こうは数人の遊び相手をキープしつつ、“僕のお母さんになってくれる女性は、どこにいますか”って探し歩いてる。でも彼は、このままだと幸せにはならないね……。寂しさのある男ってモテるわけだけど、若いうちだけでしょ。向こうが“擬似お母さん”に求めているものは無限の愛だからね。彼が30歳くらいになったときに、今回自分が春美さんにした同じようなことを、今度は女の子からされますね、必ず

春美「今は、別れられて、よかったって思うんです」

二村「ヤリチンにハマって、“私がどうにかしてあげなきゃ……”みたいになるのが、いちばん人生を損ないますからね。むしろ彼のほうからフッてくれてよかったんじゃないかな」

──春美さんは、12年前につきあった彼以降、彼氏がいないとおっしゃってますが、12年前の元カレとの恋愛は他の恋愛とは違ったのですか?

春美「自分ではすごくこじらせているってわかっているんですけど、12年前につきあっていた彼氏を超える相手と、まだ出会えていないんですよ……」

◇   ◇   ◇

 12年前の彼氏はいったいどんなスペックの持ち主だったのか!? 今回に続く後編では、春美さんに彼氏ができない原因の真相に迫ります!

*本日の二村格言*

「器用な猛アタックができる人は、必ず、複数の相手に同じことをしてますね」

(取材・文/池守りぜね、監修/二村ヒトシ) 


【PROFILE】
二村ヒトシ(にむら・ひとし) ◎1964年、六本木生まれ。慶應義塾幼稚舎卒、慶應義塾大学文学部中退。AV男優を経て、'97年からAV監督。現在では定番になっているエロの演出を数多く創案した。著書に『すべてはモテるためである』 『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(いずれもイースト・プレス)、共著に『オトコのカラダはキモチいい』(ダ・ヴィンチブックス)、『どうすれば愛しあえるの ──幸せな性愛のヒント──』(KKベストセラーズ)、『欲望会議』(角川ソフィア文庫)、『深夜、生命線をそっと足す』(マガジンハウス)など。
本人Twitter→@nimurahitoshi