テクノロジーで、新たな高齢者の生きがいはつくれるのか?

──ひろこさんのように、高齢期でも新たな生きがいを見つけて 暮らせるようになるのは、これからの日本社会に必要なことではないかと思います。

下西:僕もそれは強く感じていて、このプロジェクトを通して高齢者に新たなつながりや生きがいをつくり出せればいいなと思っています。先日、フードコートで食事をしていたら、井戸端会議をしているおばあちゃんグループの中で「家に帰りたくない」と話している方がいたんです。その方は旦那さんが亡くなり、子どもたちも巣立って、家に帰るとひとりになってしまうそうで。寂しいから、なるべくここにいたいと切実に話している姿が印象的でした。今の日本には、この方のように孤独や寂しさを抱えている高齢者も多いのではないでしょうか

 僕のおばあちゃんも「どんな人でも、会いに来てくれたらうれしい」と話していました。この活動が家族やそれ以外の方との交流を生み出し、日々を生き生きと暮らせる高齢者が増えるきっかけになれば、プロジェクトを立ち上げた意味もあるのかなと思います。

──高齢者の生きがいをつくるうえでは、やはり今回の「メタばあちゃん」プロジェクトのように、新たなテクノロジーも大きな役割を果たしていくのでしょうか。

下西高齢者を根気強くサポートすることができれば、テクノロジーを使って新たな生きがいを生み出すことは可能だと思います。僕たち若い世代はどうしても、“高齢者はテクノロジーについてくるのは難しい”と考えがちです。でも、使い方を2~3回ほどレクチャーして何度もトライしていくことで、壁を乗り越えて基本的な使い方をマスターする方も多いんですよ。70~80代の方がメタバース空間で打ち合わせをするといったことも、不可能ではありません。新技術を使った高齢者向けのサービスはまだ少ないですし、発展の可能性を秘めた分野だと考えていますね。

 それこそ、TikTokでは昔流行した曲が急にバズることもありますし、おじいちゃんおばあちゃんがスターになっていく世界も往々にしてあるんだろうなと思います。SNSやYouTubeが使えれば、活動のフィールドは日本だけでなく世界に広がる。もしかすると、日本の高齢者の活動が海外で流行(はや)る事例も出てくるかもしれません。実際、「ひろこ(85)」の動画も台湾の方の登録が全体の15%を占めています。歳をとってから世界でスターになる、まさに一発逆転のようなストーリーが生まれる可能性もあるなと思います。

──非常に夢の広がるお話ですね。

下西:そうですね。僕としてはこの活動で高齢者の生きがいを創出するだけでなく、社会構造の変化も起こせるのではないかと期待しています。今回のメタばあちゃんプロジェクトで出た収益は、僕の利益にするのではなく、僕がお世話になった若手クリエイティブプロデューサー育成塾や若者を支援するNPO法人などに寄付しようと考えています。高齢者と若者はよく対立構造で語られることも多いのですが、僕たちがやっているような高齢者によるクリエイティブ活動が増えれば、高齢者が生み出した収益を若者に還元する構造も生まれるのではないかと思います。