0.5秒で「aikoさんの曲だ」とわかる素晴らしいイントロ

──おもしろいですね。普段何気なく聴いていたイントロに集中しなきゃ、という気になります。ちなみに藤田さんから見て「このアーティストのイントロはすごい!」という方はいますか?

「よく"98年デビュー組"といわれる、aikoさん、宇多田ヒカルさん、椎名林檎さん、MISIAさんは、やっぱりすごいです。それぞれがとんでもなく個性的で、イントロにも特徴が如実に出ていると思いますね。

 特にイントロに関してはaikoさんの曲は素晴らしいですよ。『ボーイフレンド』も『カブトムシ』も、曲名を聴いただけでサビだけじゃなくイントロがパッと浮かびます。新しくリリースされる曲も、0.5秒聴いただけで“あ、この曲はaikoだ”ってすぐわかります。aikoさんって、イントロで“あ~”って歌うだけで“aikoやなぁ”ってわかるんですけどね(笑)。まさに自己紹介に成功している好例だと思います

──たしかに!

最近だとOfficial髭男dismさんはイントロに力を入れているのが伝わります。『Pretender』『宿命』『ミックスナッツ』と、どの曲もイントロがキャッチーですよね。『ミックスナッツ』なんかはイントロでわくわくするというか、ちょっと笑えてくるくらいユーモラスです。

 ここ数年はイントロの秒数が短くなってきている(※)んですが、『Pretender』は約30秒もあるんですよ。これはイントロマエストロとして嬉しかった(笑)。

※ここ数年のイントロ事情に関するお話は後編で詳しくご紹介します。

『Subtitle』では歌い出しで始まったんで“お、いよいよイントロがなくなったか”と思ったんですが、最新シングルの『ホワイトノイズ』では、また超キャッチーなイントロを持ってきた。やはり“ヒゲダンはイントロに力を入れているな”と感じました」

──ただaikoさんと違うのは、ヒゲダンのイントロはどの曲もテイストが違いますよね?『Pretender』はギターのアルペジオから入りますが、『宿命』は金管楽器です。『ミックスナッツ』はあやしいサウンドで、『ホワイトノイズ』はちょっと凶悪なギターのサウンド……。予備知識なしでは“これはヒゲダンだ”とはわからない気がします。

「そうですね。今ってヒゲダンはドラマ・アニメなどのタイアップを一手に引き受けているんですよね。どの作品・企業もヒゲダンに依頼したいと思うんですよ。だからタイアップ先のテーマが先にきて、そこに合わせて曲を作っているんだと思います

 Pretenderは『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、宿命は『熱闘甲子園』(朝日放送系テレビ)、ミックスナッツは『SPY×FAMILY』(テレビ東京系)、ホワイトノイズは『東京リベンジャーズ』(毎日放送ほか)の主題歌で、どれもめちゃめちゃ番組のテーマに合ってますよね」

──あぁ、なるほど……。

「ここ数年は、VaundyさんやYOASOBIさんの曲作りにも同じ現象を感じています。今は広告やコンテンツが増えまくっている分、タイアップも増えるでしょうね。

 なのでメジャーなアーティストに関しては“曲によってイントロのテイストがまったく違う”というのが普通になっていくんじゃないか、と思います」

 次回はイントロを30年究めてきた藤田さんだからわかる。昭和・平成・令和のイントロの違いについてご紹介する。

(取材・文/ジュウ・ショ、編集/FM中西)