中原めいこの前でアカペラ披露!? 『AND I LOVE YOU』は海外でも好評

 7位には「PASSION」がランクイン。本作は、早見優主演映画『Kids』の主題歌で、レコード売り上げはオリコン最高10位ながら、累計では11.7万枚と「誘惑光線・クラッ!」以来5作ぶりに10万枚を突破。また有線放送では年間70位と、代表曲「夏色のナンシー」よりも上位となっており、そのファンキーなポップスが早見にピッタリハマったヒット曲といえるだろう。作詞・作曲は、今、海外のシティポップ・ファンにも人気の中原めいこが手がけており、今後、さらに伸びる可能性がある。

エネルギッシュな色合いの『PASSION』のジャケット写真

『PASSION』は、発売当時から本当に大好きな曲ですね。自分の路線をロック風のものやダンサブルなものに変更したいと考えていた時期に、めいこさんに作っていただけて、うれしかったです。私はレコーディングが深夜だったり、風邪ぎみだったりで思うように歌えないことが多かったんですが、この歌はたった3回でOKになったんですよ。

 その後、めいこさんと『夜のヒットスタジオ』でご一緒したら、“あの歌、すごくうまく歌っているね! どこで息継ぎしてるの?”と尋ねられたので、めいこさんを目の前にしてアカペラで歌いました。フジテレビの廊下で(笑)。“あっ、そこね! 今度コンサートで歌うから、私もそこで息継ぎするわ”って言ってくださいました。めいこさんの歌は、どれもキャッチーで、今聴いてもキラキラしているんですよ。この歌のほかに『鏡の中のアクトレス』『エモーション』なども素敵なので、海外で評価されているのもわかりますね」

 そして、Spotify第8位と第9位には1stアルバム『AND I LOVE YOU』から、「Love Light」の英語バージョン「LOVE-LIGHT」と、ミリオンヒット曲の「異邦人」で有名な久保田早紀が作曲した「ゴンドラ・ムーン」の2曲がランクイン。ほかにも同アルバムからは「I Love,who?」「ハニーな昼下がり」「青いSea Side」「太陽の恋人」「私を見つめて…」など、先行シングル「急いで!初恋」も含め、なんと8曲もTOP50入りしている。同作は、バラエティー豊かな楽曲が集められていて、必ずしもシティポップ的な作家で固められたわけではないが、これだけ人気なのは、早見の歌声の魅力によるところも大きいのだろう。

『AND I LOVE YOU』のジャケット写真。白くて美しい歯にも目を奪われる

ここで人気となっている『ゴンドラ・ムーン』と『ハニーな昼下がり』は両方大好きですね。当時、15歳で歌うには大人っぽいと思ったのですが、だから今でも好きなのかも。

 先日、アメリカのニューオリンズから日本のカルチャー情報を配信しているポッドキャスト『クリューオブジャパン』でインタビューを受けたのですが、DJの方のうちのひとりが、この『AND I LOVE YOU』のアルバムレコードを持っていてくださったんです! その方に、“なぜ、このジャケット写真では牛乳を持っているのですか?”って、恐る恐る尋ねられました(笑)。一時期、全米では牛乳を普及させようというキャンペーンがあったんですって。もちろん関係なくて、当時のディレクターさんが私の顔色とのコントラストでデザイン的に考えられたんですよ(笑)。このアルバムからは、『I Love Who?』も19位なんですね、うれしいです!

艶やかな黒髪と、耳元で揺れる大ぶりのイヤリングがとてもきれい 撮影/伊藤和幸

 早見が「本作でいちばんのお気に入り」と語る9位の楽曲『ゴンドラ・ムーン』は、ちょっと切ないミディアム・チューンで、アイドルポップスとしてはやや落ち着いた仕上がりとなっているが、ここでも早見のセンスが時代を先行しているのが興味深い。逆に、歌うのが大変だった曲はあるのだろうか。

「58位の『サテン サンバ72☆』ですね。♪トロピカル シェモア サンセット オーロラ~、と当時の喫茶店の名前が72コ並べられた歌なんですが、コンサートでどうやって覚えたらいいんだろう……って悶絶しました(笑)」

 そして、10位からは、さまざまなシングルが登場するのだが、ここでは当時のシングル売り上げ以上に人気となっている曲を中心に語ってもらった。まず、「アンサーソングは哀愁」は、'82年に発売された3作目のシングルで、しっとりとしたマイナー調のミディアム・チューン。途中に英語のセリフが入るのも早見らしい。

「これは阿久悠先生の作品ですよね。当時の新人賞関連では、ほとんどこの曲を歌っていましたから、それに合わせてのことだったんだろうと思います」

'85年の早見優。ポニーテールで元気に歌う姿は、多くの観客を魅了した