実は苦手意識があった、愛嬌のある役

──役者業に打ち込む前は、女性らしいイメージを持たれることも多かったかもしれませんが、意外ですね。

「実はモナのような明るくて元気で、万人から愛される役はほとんど経験せずにいたんです。これまで悪女やトリッキーな役柄を多く経験してきて、また私自身つい役作りを頭で考え込んでしまうタイプなので、すごく久しぶりにキャピキャピとした女の子になりきるために昔の記憶を思い出したり、K-POPアイドルの振る舞いを参考にしています

 最近のK-POPだと、IVEのウォニョンちゃんがすごく愛おしくて注目です! ふとした瞬間にファンに見せる表情がすごくキュートなのに気づきました。これも、舞台でキュートに振り切るための発見ですね」

松井玲奈さん 撮影/松島豊

──考え込みがちということは、理論派というか、考えて役に入っていくというのが松井さんの習慣だったんでしょうか。

「身体で覚えるより頭で役を作っていく傾向はありました。また、今までは現場で演出家の方に求められたことに応える、自分で考えた演技の正解をきっちり表現する、という意識が強かったのですが昨年の『歌妖曲~中川大志之丞変化~』という舞台で、毎日のチャレンジを楽しめるようになりましたね」

──どんなチャレンジをしていたんでしょうか?

「いわゆるアドリブとはちょっと違うんですが、初日が開けてからも、毎日の舞台でいろいろなアプローチを試してみたいと思ってやってみたんですね。

 例えば同じ言葉でも、脚本や舞台の雰囲気によって客席が受け取る印象は変わってきます。だから私もその日の気分によって言葉に込める感情の幅を変えてみたり、発声の圧も変えてみたりして。すると共演者のみなさんから返ってくる反応も楽しめるようになって、日を追うごとにかけ合いが熱を帯びてきたと実感していました。

 以前は“それは違う”と言われるのが怖くて思い切ったことができなかったけれど、求められるものと違ってもいいからまずやってみよう、と思えるようになったのが『歌妖曲〜』での大きな経験でしたね」

松井玲奈さん 撮影/松島豊