考えるより先に行動! 可愛さ演じる恥ずかしさを克服

──今回演じるモナも、近年演じていなかった役柄ということで、挑むことが多くなりそうですね。

「セリフひとつにも、演技をする前に“どういうこと?” “このとき登場人物はどんなことを思うんだろう?”とついロジカルに考えてしまうので、それよりも考える前にやってみようとある意味開き直りました

 というのも、いのうえさんが稽古場で見せてくれた可愛いモナ像が今の私には恥ずかしいくらい(笑)若々しいものだったので。頭で恥ずかしいと思ってしまう前に行動してみて、身体に染み込ませてしまおうと振り切って稽古していますね。

 モナは(この作品の舞台の)昭和30年代にいたギャルなんだ、と思って私もキュートでコケティッシュなギャルになりきる気持ちで、普段の私なら絶対できないような立ち居振る舞いをしています」

──『オセロー』を原典にしながら、舞台が昭和30年代になっていますね。ポスタービジュアルも昭和の任侠(にんきょう)映画のような雰囲気です。

「原典は悲劇ですが、青木豪さんの脚本のおかげで、新感線らしいコミカルなセリフのやりとりでコメディ要素も結構多いです。シェイクスピアの四大悲劇のイメージをいい意味で裏切るものになりそうです

 『オセロー』は嫉妬や噂に人々が翻弄されていく物語ですが、もし現代が舞台だったらと思うと、SNSでの誹謗中傷を連想してしまいそうで生々しく、フィクションとして十二分に楽しめないかもしれません。昭和の時代のお芝居にすることで、ノスタルジックなエンタメとして観ることができて、小津安二郎監督の映画のような空気感もあるかなと感じています」

松井玲奈さん 撮影/松島豊