◎アナスタシア(ジャーナリスト・27歳)

 アナスタシアは「私たちの“兄弟”が、どのような意図を持って私たちの土地にやってきたのか知ってもらうためにも、このような機会は重要だ」と、ロシアへの皮肉を込めてインタビューに応じてくれた。

 ロシアがウクライナに侵攻するとは信じておらず、24日の爆発音で初めて事の重大さを知ったという。

「即座に荷物をまとめ避難しようとしましたが、道は大混雑。小さい子どもがいたため、避難は諦め、家族でキース(北東部の都市)にとどまり続けています」

 戦争が始まる前に領土防衛隊が結成されていたものの、侵攻が起こるとは想定していなかった。アナスタシアは、

「防衛隊の志願者は武器を持ち、ウクライナを起こりうる脅威から守ろうとしていました。兵役義務がないにもかかわらず、戦争が始まったときから勇敢にロシア軍と戦っているんです」

 と、誇らしげに語った。

 彼女はロシア軍の戦車が、市民の乗っている車を轢(ひ)いたのを目撃している。そのときも領土防衛隊が戦車に乗ったロシア人をつかまえて、警察に引き渡した。戦争が始まってから、アナスタシアの知り合いも大勢がボランティアに参加。危険な地域から市民を避難させたり、食料を援助したりしてきた。

 戦争を起こさないために何をすべきだったのか。「誰もが最後まで、戦争が起こるとは信じていなかった」と言いよどむ。政府に対しても、「ロシアがキーウを3日で陥落させると言っていたのに、現実にはウクライナは半年以上も耐え続けている」として、批判はしていない。

 ジャーナリストとしては、正確な情報を届けることに腐心した。

「ロシアによる強力なプロパガンダに対抗し、インターネットやラジオ、テレビ、SNSなどを最大限に利用し、情報を発信し続けました」

 ロシアの隣国であるにもかかわらず十分な危機感のない日本に対してコメントを求めると、「外交手段で物事を解決するのは不可能。ロシアとの国境に壁を作るべきだ」と、強硬な提案もした。