全宇宙を救うには、“もっともダメな”現エヴリンが、もっとも可能性を秘めている
ある日、エヴリンは、いきなり別人のようになったウェイモンドから「闇の王ジョブ・トゥパキから宇宙を救えるのはキミだけだ」と告げられる。彼いわく、自分は別宇宙の自分にアクセスできるシステム“バースジャンプ”を使って助けを求めにきた、別宇宙のウェイモンドなのだと。
なんでも、多元宇宙でそれぞれに生きるエヴリンの中でも、いろいろなことに挑戦しながら、すべてに途中で挫折してきた、“一番ダメな”現エヴリンが、全宇宙を救う一番の可能性を秘めているのだという。
そしてエヴリンは、ジョブ・トゥパキを倒すべく、“バースジャンプ”を使って別宇宙の自分から、カンフーをはじめとした能力を取得していくのだが、ジョブ・トゥパキの正体が、愛する娘・ジョイだと知ることに。
別宇宙の表現(映画『花様年華』風やアニメ『レミーのおいしいレストラン』風、なぜか指がソーセージの世界!?も)や、エヴリンやウェイモンドの別人ぶりに笑ったり、驚かされたりしつつ、物語はだんだんと深遠に哲学的になっていく。人によって強く感じるポイントも違うだろう。
母と娘の物語が軸ではあるが、エヴリン自身も娘であり、また妻であり、当然ひとりの女性である。指がウインナーの奇妙な世界では、別の純粋な愛の物語が生まれ、刺さってくるのも映画らしいマジックだ。
さらにはこの多元宇宙は、インターネット社会を映してもいる。だが本作で真に大きいのは、優しいだけの夫に映りがちなウェイモンドの存在なのだと言いたい。