木曽さんは東京女子プロレスの先生!? 伸びる選手とは?
──DDT以外では、東京女子プロレス(以下、東女)でもレフェリーをされています。男女の違いってありますか?
「DDTでデビューしてから、アイスリボン、スターダム、REINA女子プロレスといろいろな女子団体にレフェリーとして呼ばれたんです。そのときは、戦術というか技の出し方とかは男子とは違うなって感じましたね」
──木曽さんはご自身のブログやTwitterで選手について書かれていたり、試合の見どころについても触れています。
「少しでもプロレスファンの裾野を広げたいと思って。選手についてはいい部分は書いてあげたいんです」
──先生みたいですよね。
「ははは、この子たち(貼ってある東女のポスターを指しながら)にしてみたらそうかもしれないですね。でも基本的には、試合でしか会っていないんですよ」
──身近で選手たちを見ていて、こういう子が伸びるっていうのはありますか?
「いろいろなタイプがあると思うんです。挨拶も礼儀もきちんとしていて、練習もまじめに取り組んでいる子ってすごく伸びる可能性が高いじゃないですか。でも遅刻や忘れ物ばかりしている子も伸びたりする。要は“プロレスを好きかどうか”じゃないですかね、男も女も。あとは理想像に近づきたいという気持ちがすごく強いタイプが、それに少しずつ近づいていけるのかもしれないですね」
──レフェリーは体力的にもすごくハードだと思いますが、健康管理のためにされていることはありますか?
「ジムですかね。レフェリーって試合に巻き込まれるかもしれないじゃないですか。だから朝から練習しているんですよ。運動とか習い事って何でも始めるのが遅いとか、早いとか関係なくて、やっていないよりは始めてる時点で勝ちなんだって思いますね」
理想は“いたのを気づかれないレフェリー”
──木曽さん自身は、どのようなレフェリー像が理想ですか。
「プロレスのレフェリーっていろいろなタイプの方がいて、すごく面白いと思うんです。見た目や動きの速さ、大きさ、声の出し方……そんな中で自分が目指してるのは、どちらかというと無個性なほうなんです。
昔、元レスラーの木村響子さんが現役だったころに、試合が終わった後に片づけをして挨拶に行ったら、“あれ、今日いたっけ?”って言われたんです。“レフェリーしたじゃないですか”って答えたら、“それぐらい存在感がなかったってことは、選手の邪魔にならなくて、ちゃんと試合を裁いているわけだから、すごくいいことだよ”っておっしゃってくださった。僕にとっての選手との距離は、“今日いたの?”って言われるぐらいがちょうどいいですね(笑)」
──裏方でいうと、木曽さんは選手たちに交じってリングの片づけもしていますよね。
「僕はDDTのリングトラックも運転していますからね」
──リングトラックとは何ですか?
「ばらしたリングや大きい荷物を積んで運んでいます」
──レフェリー以外にも、リングの設営から機材運搬までされているのですね。
「何でもしないとね。お給料がもらえないんです(笑)」
──木曽さんはDDT以外にも東女、ガンプロと3団体でレフェリーをしていて、それぞれの選手も把握していないといけないし大変ですよね。レフェリーの面白さってどういう部分でしょうか?
「オリンピック競技のレスリングでは、フォールって1秒以上って明確な決まりがあるんです。でもプロレスって3カウントだけど、3秒じゃない。レフェリーによる違いも出るから非常に面白いと思います。ジョー樋口さんはどちらかというとカウントが遅いんですよ! だから子どものころは、“もう、何やってるんだよ! (和田)京平さんなら今の勝っていたよ!”って見ながら思っていました(笑)。でも、三沢(光晴)さんがスタン・ハンセンに初めて勝利したときのレフェリーがジョーさんで。エルボーでハンセンが倒れてるのに、“(カウントが)遅いよ!”って。でも3カウントが入った瞬間に、武道館が大爆発したんです。そういう面白さってあると思いますね」
──子どもがプロレスごっこをするときに、レフェリーのマネをしたりします。そうするとレフェリーって簡単にできるのかなって思われたりしませんか?
「そう思わせたら、こっちの勝ち。それがいい。そうやって周りから見えているのなら、僕が思ったとおりにできてるんじゃないですかね?」