生きづらい人が共感できるような漫画を描き続けたい
──最終巻の見どころを教えてください。
これまでの美優には本当にいろいろなことがあったので、「ハッピーエンドで終わらせるわけにはいかない」とは考えていたのですが、私の価値観で言うと美優にとってはいいラストでした。彼女が取り憑(つ)かれていた何かから解放される瞬間、希望を感じた気がします。
執着していたものを手放したあと、美優だったらどうするかなと考えて出した答えがあの結末で。完結した今、作者である私から美優に「よかったね」と伝えたいです。
これから読む方には、ぜひ美優の人生を見届けていただきたいし、そうすることで読者さんの心を軽くすることにつながれば最高だなと感じています。
──人生がうまくいっていない人たちに対する文野さんの温かいまなざしを感じます。
私も自分の人生がうまくいっているなんて思っていないのですが、ドキュメンタリー映画の中で、報道の意義のひとつとして「困っている人(弱者)を助ける」という風に紹介されていたことに感銘を受けて、自分も世間に理解されなくてつらかったり、マイノリティだったりするキャラに寄り添った創作をしたいと思うようになりました。今後は美優と異なるかたちで苦悩していたり生きづらさを感じたりしている人にスポットを当てられたらと思います。
私は漫画を描いているので、漫画という枠組みの中で、そういった方々に共感してもらえたらありがたいなと思っています。最近はコンプライアンスの問題で取り上げるのが難しい内容もありますが、それも踏まえつつ、いろいろと構想を練っている最中なので、次回作も読んでいただけたらうれしいです。
(取材・文/若林理央)
【PROFILE】
文野紋(ふみの・あや) ◎漫画家。1996年生まれ。2020年、読み切り『君の曖昧』が『月刊!スピリッツ』(小学館)に掲載され商業誌デビュー。'21年1月にはデビューから約1年という、新人としては異例のスピードで短編集『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を上梓する。同年9月、『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で『ミューズの真髄』を連載開始し、'23年3月10日、最終巻が発売に。