キャラクターを語ろうとするとき、私は必ずといっていいほど”名は体をあらわす”ということで名前に注目するのだが、例に漏れず彼女の名前を見てみると、「世を知る」と書いて「ともよ」と読む。

 知世の声を演じた岩男潤子氏がアニメ版クロウカード編コンプリートブックで、

《つらいときでも知世ちゃんはさくらちゃんたちに心配をかけまいと、明るくふるまうんですね。(中略)心底いい子だと思うんですけど、もっとわがままでいいんだよ、甘えてもいいんだよ、と言ってあげたくなりますね》

 と語っているように、彼女は小学生にあるまじき、精神の成熟した女性なのである。

 そして、アニメ版クロウカード編第50話の「さくらと小狼とみえない糸」で、知世は桜にこう伝える。

「大好きな人が幸せでいてくださることが、いちばんの幸せなんです」

 たとえ想い人が違う人間を好きでいても、それで幸せなら、それこそが自分の幸せになりえる──このような台詞を小学生である知世が発していることに驚き、また彼女の深い慈愛に心動かされたファンも決して少なくないだろう。

 知世は小学生の女子だが、中身は恋愛やいろいろな面において達観した大人の女性なのだ。そして桜に対する彼女の想いは、「どうかずっと幸せでいてほしい、そしてそれを傍(そば)で見ていられるだけで幸せ」という、「自分が恋をしているにもかかわらず、傍観者に徹する恋」なのである。

 そうなると、彼女がクロウカード回収のときに桜に着させるバトルコスチュームや、戦闘を記録するビデオカメラなどが説得力を帯びてくる。

 桜を笑顔にさせ、成長させるためのバトルコスチューム。

 桜を客観視して愛する象徴として残しておくための記録用ビデオカメラ。

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 成長し、大人に近づいていって、いつか本当に心から愛することのできる人を見つけるまでの過程を見守り、傍にいてあげられるのが私でありたい。その想いを育むきっかけは何だったのかと考えてみたときに思い浮かぶのは、知世の母である園美だ

 知世が桜を想うのと同じく、園美も亡き桜の母・撫子を特別に想っていた。その想いの深さは、16歳で撫子が結婚相手に選んだ桜の父・藤隆を憎むほど。撫子が他界し、その想いは伝えられなかったものの、心の中には常に撫子の存在があり、想いの深さは変わらない。知世の”想い人の傍で幸せを願う”という姿は、そんな母に育てられたからこそ受け継いだものなのかもしれない。