共感を得やすい「母と娘の物語」
調査対象(!)としたのは、私が朝ドラにハマったきっかけの『ゲゲゲの女房』(2010年度前期)から『舞いあがれ!』まで26作。ヒロインは『カムカムエヴリバディ』(’21年度後期)が3人だったので、合計28人。うち結婚しない、または結婚しても母にならないヒロインが7人いて、母になったのは21人。子ども(養子も含む)をみると、「女の子を1人育てた」が11人。「男の子を1人育てた」が4人、「2人以上を育てた」が6人。ということで、やはり一人っ子率が高く、それも女の子の一人っ子が最大派閥だとわかった。
この世には男女がおおよそ半々ずつ生まれるわけで、朝ドラヒロインの出産は明らかに偏っている。ヒロインにモデルがいてモデルの実人生に合わせている場合もあるが、それはさておき私なりにその理由を考えてみた。結論は(1)ヒロインだから、(2)それどころじゃないから──だと思う。
まず(1)だが、「朝ドラは女(ヒロイン)の一代記」によることが大きいだろう。最近では『カムカムエヴリバディ』がそうだった。安子(上白石萌音・森山良子)から始まる3世代の物語だったが、安子の一代記でもあった。夫を戦争で亡くし、一人娘るい(深津絵里)とは離れ離れになった安子。母へのわだかまりを抱えて生きるるいだったが、最後に2人は和解する。そこへと導いたのは、るいの娘・ひなた(川栄李奈)だった。
「大人の女3人」がそれぞれの人生を経て、それぞれを理解するのだ。ひなたには弟もいるが、年が離れた設定だったのはそういう訳だと思う。男子は母の人生を理解しないのかと言われると困るが、「娘の母へのさまざまな思い」は朝ドラの主たる視聴者である女性なら、みなわかるはずだ。つまり、視聴者の共感が得られる物語を展開しやすい。だから女の子が生まれる。