限られた放送時間で描かれる「子育て」
次の(2)は「一人っ子」問題への答えだ。『舞いあがれ!』が典型だと思う。歩が生まれた24週のタイトル「ばんばの歩み」だった。ばんば=祖母・祥子(高畑淳子)の歩んだ人生と、生まれてきた歩。ふたつが重なるタイトルだが、主眼はばんばだった。軽い脳梗塞を起こし一人暮らしができなくなった祥子と、離れて暮らす娘(めぐみ=永作博美)の葛藤が描かれて、脚本家の桑原亮子さん(24週から戻ってきた!)が描きたかったのは、「子育て」より「老い」。そう理解した。
桑原さんは今回、自立が次第に難しくなっていく親と離れて暮らす娘を描いた。女性が年齢を重ねると遭遇する「よくある事態」で、双方の判断はとても難しい。社長をしているめぐみは祥子に、大阪であなたの面倒を見たい、社長は降りる、うまくいかないなら2人で五島に帰ろう。そう説得し、祥子は大阪に来た。それでハッピーエンドではないはずで、これからの展開を期待している。
というわけで、女性の人生、テーマはいくらでもある。どこに注目するかは脚本家次第だ。とはいえ、「出産」「子育て」をする人が多い以上、なしにはできない。だったら、とりあえず1人は産んでもらおう。制作サイドの頭の中を想像してみたが、限られた放送時間だから、きょうだいを描く余裕はそうそうないだろう。そんなわけでヒロインは「一人っ子の親」になりがちだ。(1)と合わせ、女の子を1人育てるヒロインが多数派となり、舞もそのひとり。
という分析をしてみたのだが、どうもこのところ、舞の人生が見えないなあと感じている。予告編によると、再び「空」が出てくるようだ。あと2週、舞の人生が見えるといいな。そう願う今日このごろだ。
(文/矢部万紀子)