──とてもよくわかります。ゴールデン番組にはない、ディープさがたまらなかったです。

「番組終了にあたって“番組としての役割は果たした”というコメントを出していたんですけど、すごく腑(ふ)に落ちましたね。40年にわたって番組で二ッチな世界の魅力を示してくれて“あとは自分で楽しめるでしょ”と言ってくれてるような気がするんです

 たしかに今はどんな世界でもSNSで認知できるようになりました。昭和・平成のときはタモリ倶楽部というメディアでしか扱われなかったサブカルチャーも、今はYouTubeで調べられます。こうした時代背景も含めて、40年の節目で“役割は果たした”と宣言したのかな、と私は思いました

──なるほど。すごく腑に落ちますね。実際「空耳」に関してもニコニコ動画でブームになっていた時期がありました。あれはまさしくタモリ倶楽部で空耳のおもしろさを学んで、自分たちで実践した感じですよね。

「そうですよね。ニコニコ動画のコメントで空耳っぽい英語が聴こえて、それがコメント(通称:弾幕)で流れるのって、最適な仕組みだと思います。

 ニコニコ動画は時間経過などによってコメントが消えていくけど、おもしろい空耳は常に残っているんですよ。つまり何年たっても“この空耳はみんなに知らせなきゃ”という思いで、誰かが常にコメントを残しているんですよね。それによって公開当初は優劣乱立していた空耳が、時間の経過とともに質の高い空耳だけになるんですよ。プログラム制作者は意図していないかもしれませんが、空耳にとっては画期的な仕組みだと思います。

 そのほかにもダムや工業地帯の夜景など、タモリ倶楽部ではずっと前に特集していた企画が、今や普通に観光ツアー化されています。タモリさんをはじめ、スタッフの方の目のつけどころが鋭かったからこそ、時代を先取りできたんでしょうね。

 だからわれわれも“タモリ倶楽部が終わって寂しい”と嘆(なげ)くのではなく、タモリさんに教わった楽しむための"コツ"を自分たちで育てていくべきかもしれませんね

──前向きで素敵な言葉です。たしかにSNSが発達する前は、メインストリームとサブカルチャーで二極化していた。でもコンテンツが増えては廃(すた)れる現在は、メインもサブもなくいろんなコミュニティが膨大に存在している印象です。

「そうですよね。そういう意味でもタモリ倶楽部のようなテレビ番組はもう出てこないかもしれませんね。Twitterで“タモリ倶楽部が終わったらテレビ見ない”というコメントもありました」