タモリ倶楽部から学んだ「真に自由な生き方」

「32年間、空耳アワー辞典をまとめるにあたって奮起したことはない。ただ自分が楽しいことをやっていただけ」。川原田さんの最後の言葉が印象的だった。決して頑張らず、ただ楽しいことを無理なく続ける"タモリイズム"を感じた。

「タモリという人間はたまらなく素敵だ」。テレビやYouTubeを見るたびにそう思う。笑わせなきゃいけない芸人、演じなきゃいけない役者、撮れ高を気にしなきゃいけないYouTuber、映えなきゃいけないインフルエンサー。ぱっと見、自由っぽく聞こえる「好きなことで生きていく」という言葉は、もはや死語となった。気づけば肩書きに縛られ、背負った"業"をまっとうしようと頑張っちゃう。心から好きだったはずなのに、気づいたら居場所を守るために"努力"をしてしまっている

 その点、タモリほど真に自由な人はいない。決して無理をしない。タモリ倶楽部でもそうだ。冒頭で「私は初めて見るんですが」と言いながら、早速「へぇ、おもしろいねぇこれ」と笑い、空耳アワーに入るころには夢中で遊んでいる。共感できないことは「いやいや、おかしいよこれは」とツッコむ。

 そんな正直なタモリの姿を何度も見てきた。つい「これからも見ていたかった」と言いたくなる。でも川原田さんの言うとおり、私たちファンはもう甘えちゃいけない。タモリ倶楽部で養った"ものの見方"と"好奇心"を使って、これまでどおり流浪のように飄々と暮らす。「ただ生きている中でおもしろいことが見つかった」くらいがいい

 そんなセンスを磨かせてもらったタモリ倶楽部に、あらためて感謝を伝えたい。

(取材・文/ジュウ・ショ、編集/FM中西)