5月や11月スタートでは普通のドラマと違わない!?

 この間、何が起きたかというと、視聴率低下だった。ビデオリサーチ社のデータで期間平均視聴率(関東地区)を見てみると、『エール』の20.1%が『おちょやん』で17.4%とガクッと落ち、『おかえりモネ』が16.3%、『カムカムエヴリバディ』で17.1%と少し盛り返したが、『ちむどんどん』が15.8%。

 この凋落傾向には「年度とのズレ」が関係している。そうにらんでいるのは、年度と朝ドラは親和性が高いと思うから。そもそも月曜から金曜まで毎日放送されるのが朝ドラで、月曜から金曜ないし土曜まで行くべき会社や学校との相性がよいと思うのだ。しかも年度始めと折り返し地点で始まるから、実生活での「新たなスタート」と「新しい朝ドラ」が重なる。だから、朝ドラを見よう。視聴のきっかけになる。

 そう実感したのは、タイミングがズレてから。5月や11月に始まる朝ドラを見始め、これでは普通のドラマと変わらず、「なんとなく見ない」人が増えそうだなと思った次第だ。だから『舞いあがれ!』が視聴率回復への一歩となるかというと、そうはなりそうにない。毎週の平均視聴率が15%あたりで推移していて、最終的に『ちむどんどん』超えも微妙は気配ではある。だけど『らんまん』が4月3日にきっちり始まる。3月31日に終わった『舞いあがれ!』が平常運転、つまりウィズコロナへの一歩となったことは間違いない。

『らんまん』に主演する神木隆之介とヒロイン役の浜辺美波 

 コロナ禍の間にテレビ離れはますます進み、リモートワークも日常化した。「リモート」と朝ドラの相性はあまりよくないかもしれず、その意味では『らんまん』も先行き不透明だ。が、当たり前だが肝心なのは内容だ。『らんまん』が視聴率回復の一歩になることを期待したい。

《執筆者プロフィール》
矢部万紀子(やべ・まきこ)/コラムニスト。1961年、三重県生まれ。1983年、朝日新聞社入社。アエラ編集長代理、書籍部長などを務め、2011年退社。シニア女性誌「ハルメク」編集長を経て2017年よりフリー。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』など。