MEGUMIさんとは台本にないなれそめも細かく設定し役になりきった
──克の元妻で娘を殺された澄子を演じたMEGUMIさんとの思い出深いエピソードはありますか?
「すばらしいキャストが集まった作品ですが、基本的にオーディションで役を決めました。僕もオーディションに立ち会い、特に澄子役とは物語の核となる元夫婦を演じるので、最終選考に残った数人と芝居を合わせました。俳優が演じるうえで大事なのはケミストリーですからね。本作は企画がスタートしてクランクインまで急ピッチで進めましたが、MEGUMIさんは短期間で作品に強い思い入れを持ってくださり、初対面のときからいろんな話をさせてもらいました。
克と澄子の娘が殺された7年後から物語は始まり、2人は離婚している設定です。でも、その前に2人には出会いから恋に落ち、結婚して娘が生まれて……という大切な時間を過ごしてきました。どこで会ってどんな風に交際して、プロポーズはどうだったのかなど、MEGUMIさんとは時間をかけて話し合い、台本には描かれていない2人の思い出を細かく鮮明に決めていきました。プライベートな時間もたっぷり使い、会えない時はメッセージでやり取りして準備を進めました」
──克と澄子の夫婦像を作り上げてから、役に臨んだんですね。本番前にそんな風に準備をするのは一般的ですか?
「リアリズムという演技法で、僕は以前から続けています。MEGUMIさんもその演技法を勉強していらっしゃったので、やってみよう、ということになりました。自然に役になりきりリアルに演じていく方法で、欧米ではポピュラー。日本ではスケジュール上、準備に時間をかけるのは難しいのが現状かもしれません」
──撮影前にそんなにコミュニケーションを取っていたとは、ビックリしました。
「MEGUMIさんがそれだけ熱心に取り組んでくださったからです。初共演でしたが、お互い、自然にスッと役に入り込めたと思っています。娘を演じた成海花音ちゃんとは、一緒にパンケーキを食べに行ったりしましたし、携帯電話の待ち受け画面もしばらく彼女の写真にしていました。娘を思う父親としてできる限りの行動をしました」
──実際に家族のようなコミュニケーションをとってきたんですね。それを知って鑑賞すると、克や澄子の思いやいろいろな場面がよりリアルに伝わってきます。
「克が加害者に対面した後の終盤からラストシーンなど、みなさんそれぞれの見え方や受け止め方があると思います。克が赦したのか赦していないのか、自分に問いかけてみてください。誰の日常にも起こり得ることかもしれませんから、老若男女問わずたくさんの方に見ていただきたい作品です」