リアリズム=芝居をしない。ストイックな役づくりで国際的な賞を受賞

──韓国の釜山国際映画祭に、連続で出席している尚玄さん。'21年には『義足のボクサー GENSAN PUNCH』がキム・ジソク賞を受賞。'22年には同賞に『赦し』がノミネートされ惜しくも受賞を逃しましたが、個人で「アジア・スター・アワード」を受賞されましたね。国際的な評価の受け止め方は?

「栄誉ある賞をいただき光栄に思いました。『義足のボクサー GENSAN PUNCH』は受賞を意識していなかったので、トロフィーを受け取ったときにうれしさでいっぱいでした。'22年の個人受賞もありがたく、感謝するばかりです」

──リアリズムという演技法について、どうやって学んだのかなど教えてください。

「本格的にリアリズム演技を学ぶため、'08年にニューヨークに渡りました。シンプルに説明すると、芝居をしないのがリアリズム。『赦し』を例に挙げると、監督が撮影の数週間前に衣装を用意してくれたので、それを着て過ごすことから始めました。胸ポケットには安い酒を入れてね。そしてクランクインの10日くらい前には家を出て、都内の安いホテルで過ごしました。そうやって撮影前から樋口克として生活する、それが俳優としての僕の根本です。演じる人物になりきるにはもちろん限界がありますが、撮影前から長ければ長いほど、時間をかけるのがいいと思います。他にも演技のアプローチ方法はいろいろあり、いくつか学びました。その中で自分なりのメソッドを見つけ、実践しています」

沖縄の街並みに溶け込む尚玄さん。絵になりまくりです! /映画『10ROOMS』より (C)Fanfare Japan

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「リアリティー」をとことん追求し、役づくりへの妥協を許さない尚玄さん。だからこそ、彼の演技は人々の心を揺さぶり、深く考えさせるのかもしれません。インタビュー第2弾では、俳優になったきっかけや国際的な活動についてを詳しくお聞きしています!

(取材・文/饒波貴子、撮影/小橋川恵里奈、撮影協力/トリップショットホテルズ・コザ)


【PROFILE】
尚玄(しょうげん) ◎1978年生まれ、沖縄県出身。大学卒業後、バックパックで世界中を旅しながらヨーロッパでモデルとして活動。2005年戦後の沖縄を描いた映画『ハブと拳骨』でデビュー。2008年ニューヨークで出逢ったリアリズム演技に感銘を受け、本格的に芝居を学ぶことを決意し渡米。現在は日本を拠点に邦画だけでなく海外の作品にも多数出演している。2021年主演・プロデュースを務めた映画『義足のボクサー』が釜山国際映画祭にてキム・ジソク賞を受賞。2022年同映画祭でAsia Star Awardを受賞。

◎映画『赦し』(2022年/日本)


監督・編集:アンシュル・チョウハン
出演:尚玄、MEGUMI、松浦りょう、生津徹、成海花音、藤森慎吾、真矢ミキ

製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS/配給:彩プロ

公式サイト https://yurushi-movie.com
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=gCXHTUFct3A