ザハ・ハディドに谷口吉生に坂倉準三……ほとばしる建築愛

──国内外を問わず、見に行ってみたい建築物や好きな建築を教えてください。

「見に行ってみたい建築物はたくさんあります。まず、王道中の王道ならサグラダ・ファミリア。あとは、ニューヨークにあるトーマス・ヘザウィックというイギリス人デザイナーが手がけた『リトルアイランド』という水上公園。何本もの細い脚が土台になっている建築で、私が好きな『ファイナルファンタジー(以下、FF)』シリーズに出てきそうな、現実離れした造りなんです

ニューヨークにある水上公園『リトルアイランド』

──確かに『FF』感があります。

「ザハ・ハディドも好きです。アゼルバイジャンにある『ヘイダル・アリエフ・センター』なんて最高ですね」

ザハ・ハディドが設計したアゼルバイジャンの複合施設『ヘイダル・アリエフ・センター』

「日本の建築家では谷口吉生さんとお父さまの吉郎さんが手がけた『金沢建築館』。庭園に池があって、その水面に映る風景が本当にキレイなんですよ。坂倉準三さんの『鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム』(旧神奈川県立近代美術館 鎌倉館)も敷地内の池に映る姿が素晴らしいのでおすすめです。ちなみに、私の卒業した静岡文化芸術大学の建物は坂倉準三さんの設計事務所の作品です。迷路みたいな構造で、自慢したいくらいおもしろい学校でした」

坂倉準三が手がけた『鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム』(旧神奈川県立近代美術館 鎌倉館)
谷口吉生が設計した『豊田市美術館』

──ザハ・ハディドに、谷口吉生と坂倉準三。対照的なセレクトですね。

「谷口吉生さんの作品だと『豊田市美術館』も好きですし、行ってみたい建築はまだまだたくさんあります。ザハのような現実離れした建築も好きですし、一切の装飾を省いて機能美を追求したシンプルな美しさにも惹(ひ)かれます。なんて言うんだろう……ド正論の中のド正論と言いますか。これは私もよく注意されたことなんですが、建築を学ぶ学生は夢を追うあまり、デザインにこだわりすぎて実現できないような設計をしがちなんです。多くの建築を見るとわかってくることですが、建築って機能によって形が変わるんですよね。そこを利用する人に合わせた最善の導線を考えると形が見えてくる。デザインありきではなく、デザインは機能に従うということがわかってくるんです

──まさに「形態は機能に従う」ですね。

「見た目で印象づけて人を呼ぶ建築も好きですし、機能美を追求した建築も好きだけど、私の場合、1日の中でも好きな建築が変わるんですよ。音楽と同じで、朝に聴きたい曲もあれば夜に聴きたい曲もある。好きな建築を挙げてと言われても、毎回答えが変わるんです。だから“これが最強です!”と決められなくて、好みがそのときそのときで変わっちゃう

──では、今日の最強の建築はなんですか?

「パッと浮かんだのが『リトルアイランド』なんですよ。でも、このインタビューが終わるころには変わってるかも。振り幅すごいんで(笑)」

──ロケに行けたらいいですね。

「ぜひ書いておいてください(笑)」