過去や未来などない。歌舞伎町にはただ「今」だけがある

Smappa!Groupではボランティア団体「夜鳥の界」の運営もしており、スタッフのみなさんが歌舞伎町の清掃活動をおこなっている

──「お金が正義」の話でいうと、以前歌舞伎町で働く方に取材した際「"かわいい"じゃなくて"〇万円稼げる顔"って褒めてほしい」と言われたんです。そのことを思い出しました。

ホストもよく整形して、"今"お客さんに喜んでもらえる顔に変えていますよ。“1年後はこの顔は流行(はや)らないけど、どうしよう”とも考えない。この1年でお客さんを獲得する、という気概で商売をしています。経営側も3年かけて従業員を教育しようなんて考えません。

 歌舞伎町って常に刹那的なんです。だから他の町にはない勢いとインパクトが生まれるわけですよね。そのエネルギーに魅力を感じる方も多いんじゃないかな」

──未来や過去を振り返るのは意味がなく、常に「今」しかない。「而今(過去や未来ではなく今に集中すること)」というか……これも禅的で自由な考えだと思います。

私自身、子どものときから”将来の夢”とかを考えるのは嫌いでしたね。未来なんてわかんないですからね。本来は人生って“今”の連続であって、過去とか未来は結局のところ今を生きるための安心材料でしかないと思うんですよ。

 それでも社会は未来の不安をあおって、住宅ローンとかを組ませるじゃないですか。為政者がそういったことを後押しして今(現実)から目を逸らさせ、未来や過去に目を向けさせるのは、私は無責任な気がします。

 資本主義社会では理想論かもしれないけれど“1円もなくて職もなくたって、今を生きていこう”と前を向ける社会がやっぱりいいですよね。働きたい人が働けばいい。私は資本主義というルールもゲームのようで好きだから仕事をするわけであって、そういう風に仕事をしたい人が仕事をすればいいと思っています。誰もかれも未来や過去の話を押しつけるのは、よくないと思います

──さっきの肩書きの話にも通じますが「今しかない」という考えは「"ただのひとりの人"として扱う」という考えにも近いものがありますね。その人のバックグラウンドなんか関係ない。

その人が何をやってきたか、何をする予定なのか、なんて関係ないですからね。“で、今どんなことに気づけるの?”“今、何を感じるの?”というだけです

 だから歌舞伎町では、誰もが素の自分として存在できる。そのうえで受け入れてくれる。だから当然、いろんな人がやってくるようになるんでしょう」

(取材・文/ジュウ・ショ、編集/FM中西)