『千鳥の鬼レンチャン』出演辞退から学んだこと

──えっ、そうだったんですか。それはまた、なぜですか?

「最初は曲のキーを変えて歌えると思っていたんです。でも、オリジナルキーでしか歌えないということがわかり、“今回は辞退させてください”と、お伝えしました。もし、僕が高音を振り絞って歌えたとしても、音を外して不合格になれば、歌手活動に支障が出ると思ったからです。

 最近の曲は、僕に歌えないぐらいキーが高く、限界を超えています。番組ディレクターからは“収録まで時間がないので、困ります”と言われ、少し時間をいただいて、考えてみることにしたんです。

 “そうやって断っているけど、お前は歌手やろ”と。“頑張って歌える曲を選んで、やってみるという解決策も考えられないのか”と、改めて自分に問い直してみたんです。

 それで考え方を変え、最初選んでいた曲のほとんどを入れ替え、もう一度やってみることにしました。その結果、みんなに名前を覚えていただけるようになりました。

 そこで反省したのは、“自分がこれでいいやと思ったら終わり”だな、ということです。自分が大切にするべきところは守り、それ以外を変えていく。

 そういう柔軟性を持たないと、プロとして失格だと考えるようになりました。そのおかげで55歳ですが、今もちょっとずつ新たなことが積み上がっている感じがします」

いまではこのときの出演をきっかけに、木山さんをマネした“もっと木山”ことMr.シャチホコさんと曲をリリースするまでに

あと10年は、納得できる歌を歌い続けたい

──これからの人生、どのような活動を行っていきたいとお考えですか?

「あと10年は歌手として活動したいですね。そのためにアルバムも出したいですし、いつかは本も出版したいと考えています。僕は物書きになりたくて上京してきたので、それは僕にとっては挫折した夢でもありますから、もう一度チャレンジしたいですね。

 65歳を過ぎても、ずっと歌い続けたいと思っていますが、もし自分が納得できる歌が歌えなくなったら、きっぱり諦めて生き方を変えようと思っています。

 漠然と考えているのは、社会を変える活動です。これも具体的に決めているわけではないので、どうなるかはわかりません。だからこそ、今は歌えるうちに多くの人に歌を届けていきたいですね」

歌手を夢見ていた、会社員のころの木山さん 写真/本人提供
木山裕策さん 撮影/曳野若菜
木山裕策さん 撮影/曳野若菜

(取材・文/西谷忠和、編集/本間美帆)


【PROFILE】
木山裕策(きやま・ゆうさく) 1968年生まれ、大阪府出身。2007年『歌スタ!!』(日テレ系)出演をきっかけにデビュー。翌年『home』でメジャーデビューを果たし、同年の『NHK紅白歌合戦』に出演。以降、歌手活動を中心に躍進し、2019年に独立。近年では歌手活動の他、学生・管理職向けの講演活動に加え、『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)への出演が話題になるなど、多方面で活躍している。YouTuber→@user-yb7tq1cx3n、Instagram→@kiyamayusaku