叶わぬ恋物語を作ったことで、その世界観に入り込めた
──後編のお写真の中で、私が特に印象に残ったのが「日本」をイメージした花魁が涙を流しているカットでした。その涙の理由やバックボーンは本書内のインタビューでも触れていらっしゃいましたが、この物語の創作秘話などがありましたら、ぜひ教えてください。
「日本」をイメージして、まず思い浮かんだのが花魁でした。歴史をちゃんと知っているわけじゃないんですけど、「花魁」というものをテーマにして、1人の女性の人生というものを自分の頭の中で描いたときに、なかなかに壮絶な人生になっていたんですよね。
好きな人がいるけど、花魁という身分であることへの劣等感もあって、結局想っている人とは結ばれずに遊女として売られてその生涯を終える、という「叶わない恋」の物語を作ったことが、自分の中でその世界観に入り込むきっかけになったと思います。これは僕が勝手に考えたフィクションですけど、その物語にぴったりのロケーションだったし、着物もすごく素敵なものを選んでいただいたので、とても楽しい撮影でした。
──写真は1カットごとの静止画ですが、この「日本」をテーマにしたページを見ていると、まるで物語が流れているように、花魁が動いているように感じました。「きっと涙を流す前には目に涙をためていて、流した後の表情はこんな感じなんだろうな」と、勝手に想像しちゃいました。
本当ですか? そんな風に言ってもらえるとすごく嬉しいです。確かに、もしこれが映像だったら、また違う見え方や捉え方になると思いますね。
──女性らしい仕草や、色気を出すために、八木さんからどんなアプローチをして撮影に臨みましたか?
僕は男なので肩幅もしっかりあるから、撮影では肩に着物をかけて少し隠して、鎖骨の部分を少し出せば、 ある程度女性らしさは出せるかなと思いました。今回の撮影で初めてつけ爪もしたのですが、女性らしい指の見え方というのが僕の中にあって、指のしなやかな感じもわりと意識したかもしれないです。
──八木さんのイメージする「しなやかな指」とは、どんな感じなのでしょう?
言葉で説明するのが難しいんですけど(と言って、指の仕草を見せてくれる)、指を全部同じ位置にさせないというか、それぞれの指をちょっとずらして、横から見たときにちょっと動きがある感じを意識して撮影しました。ぜひそんなところも写真集で確認してみてください。