経年変化したものに「今」出会えることの美しさ

――現在発売中の1st写真集『CONTACT』は、3人のカメラマンさんとタッグを組み「美しい場所」と「表現者としての八木」と、大きく2つのテーマに分かれています。前編の「美しい場所」を目指した旅にちなみ、八木さんが「美しい」と感じるものや人に何か共通しているところはありますか? 

 僕は場所って時間だと思っているんです。同じ場所でも時間がたてば変わるじゃないですか。見た目もそうだし、建物の触り心地とかすべてがちょっとずつ変わっていくと思うんですね。人も同じで、みんな最初は赤ちゃんだったのに、時間がたてば「こんなに大きくなってる!」みたいに、同じ人、 同じ場所だけど時間の流れでどんどん変化していて、その場所に立って写っている自分も、時間と並行した「今」だと思うんですよ。

 そこに僕は「美しさ」を感じます。その場所でその瞬間にしかない、もう2度と同じものはないことってすごく美しいし、尊いものだと思うんです。例えば、今回の写真集の撮影で、僕を犬ぞりで運んでくれたシベリアン・ハスキーたちとの出会いや、触れ合ったときのぬくもりはその瞬間でしかないものですから。そういう貴重な瞬間をカメラマンの方に切り取ってもらって、こうして写真として残っていく。僕はそういったものにすごい魅力を感じています。

八木勇征さん 撮影/篠塚ようこ

――経年変化してきたものに「今出会う瞬間」が、八木さんにとって「美しい」と感じることなのですね。

 そうですね、きっとまた何年後かに同じ場所に行ったら、また何かが変わっているんだろうなって思うと、「あの時にしかなかった景色、表情、感情だったんだな」って思います。