2005年にデビューして以来、ドラマや映画、舞台と数多くの作品に出演し、役者道の最前線を走り続けている俳優の中村倫也さん。インタビューの前編では、公開中の主演映画『宇宙人のあいつ』についてお話しいただきました。後編では、中村さんの朝ごはん事情や「家族とは」についての持論、最近気になっている動物のことなどいろいろとお話しいただきました!
当て書きの役が増えたことは役者冥利に尽きる
──映画『宇宙人のあいつ』で監督と脚本を務めた飯塚(健)さんが「中村さんをイメージしたら、宇宙人っていうワードが出てきた」とおっしゃっていましたが、2021年に上演した舞台『狐晴明九尾狩』の安倍晴明も、中村さんを当て書きされたところがあると伺いました。近年そういった役が増えていますが、演者としてはどう受け止めていらっしゃいますか。
確かに増えていますね。その2つの役で言うと「何を考えているかわからない」という共通点があるし「真意が知れない」「謎めいている」というところが僕の印象としてあるのかもしれないですね。
僕自身はいつも正直な言葉で生きているから全部が真意なんですけど、この仕事を始めたころから「若手らしくない若手」というか、「やる気も悩んでいるところもあんまり見えない」みたいな印象を持たれることが多かったんです。「そういう人なんだな」と思われることに対して悩んだこともありましたけど、それを受け入れてもう長いし、あとはプロとしてそれをどう自分で使えるか、だと思っています。
──これまで中村さんと一緒に仕事をした経験や、そこで感じたものがあって「当て書きしたい」と思う人たちがいるって、素敵なことですね。
本当に、もう役者冥利(みょうり)に尽きるというかね。だからこそ、あんまり余計なことをやる必要がないというか、やってしまうとズレるので、僕がよく「役作りは特に何もしていないです」って言うのはそういうところだったりするんです。
時間や歴史というものは、対人関係においてかけがえのないものだなと常々感じていますし、今回も成長した姿を少しでも見せられたらなと思ってやっていました。
中村さんの理想の朝ごはんとは
──私は食いしん坊なので、真田家の4人が朝食時に目玉焼きにかけるものや飲み物、納豆のかき回し方がそれぞれ微妙に違っていたことも印象的でした。
脚本を読んだ時点で「朝食のシーンには飯塚さんのこういう思いがあるんだろうな」ということは伺い知れたんです。
僕は今の家庭の食卓というものをよく知らないですけど、もしかしたらスマホをいじりながらとか、テレビや動画を見ながら、それぞれがそれぞれの顔を見ない、話さないで過ごすようになってきているかもしれない。そんな中で、真田家の4人は絶対に朝ごはんは一緒に食べて、大事なことはそこで話して共有しているので、きっと飯塚さんは「そういうのっていいよね」と思っているんじゃないかなと感じました。
──中村さんの理想の朝ごはんを教えてください。
僕の今の理想は、ごはんとみそ汁と卵焼き。それに、ウインナーとか肉系のおかずがちょっとと、焼き鮭と小さいサラダ。いわゆる和定食ですね。
──品数もわりと多めでいいですね! 子どものころはどんな朝ごはんの思い出がありますか?
子どものころはパンが好きだったんですよ。トーストしたパンに、どれだけピーナッツバターを親にバレずに塗れるか、っていうことをよくやっていましたね。
──(笑)。中村家も真田家のように、朝はみんなで食卓を囲んでいたのですか。
親父は先に出社していることが多かったので、朝食の場にはいたりいなかったりしたと思います。オカンは早いうちから食べ終わっていて、僕と2歳年上の兄貴は、起きた順にテーブルに着くということが多かったと思います。
──今でも朝食はしっかり食べるタイプですか。
休みの日は「朝、何を作ろっかな?」ということから始まるので、時間のあるときは食べますが、忙しいときは食べないこともあります。役作りで身体を絞ったり鍛えたりしなきゃいけないときは、食事がすごく大事でしたね。2年くらい前に『仮面ライダー BLACK SUN』の撮影をしていたときは、身体を作るために1日のことを計算して、食事も朝から積み上げていく生活をしていました。
親と子の関係はたまたま
──映画では、日出男が「家族って何?」と夢二に問うシーンがありましたが、私も昔から「血がつながっていることが家族なの?」と考えることがよくありました。中村さんは「家族とは」について、どう考えますか?
禅問答みたいになってしまうかもしれないけど、「人生って何だろう?」とか「正義とは?」みたいな、目に見えないもので名前付けられていることっていっぱいあるじゃないですか。僕も高校生くらいのときに、そういうことを考えていた時期がありました。
広辞苑で「家族」という言葉を開いてみればその定義が書かれてあって、そう名前付けられているけど、「それで何なの?」と思っていたんです。「家族」という名前がついてはいるけど、それは定義化されたものではなく、もう少し因数分解されたものなんじゃないかなって。それに「人の誕生」ということに関して言えば、父親、母親となる2人の遺伝子から苦労して生まれたという、シンプルに生物的なことだけで「親と子」の関係ってたまたまだなと思うんです。
──本作を拝見して「自分が親や家族と思う人に、血のつながりは関係ないな」と思いました。人間関係って、もっと感覚的なものでいいのかなって。
「家族って何だろう」とか「人と人との絆って何?」という漠然としたものじゃなく、例えば、もう何回も取材してもらって「中村はきっとこう言うだろうな」と考えて「そのためにこういう準備しよう」と推し量って、いま僕とライターさんの間にあるものが「人間」だと思うんですよね。
きっと家族もそうなんじゃないかな。血がつながっていても何を考えているかわからなかったり仲が悪かったり、嫌な思い出しかない人もいれば、血がつながっていなくても「この人たちと一緒にいられてめちゃくちゃ幸せだな」って思える人もいて。「幸せ」って思うかは本人の判断基準によるし、それは人それぞれじゃないですか。なので、僕は「人と人」の間にどんな思いが漂っているかということが、その判断材料になると思うんです。
それが実際の家族だろうと、そうじゃなかろうと、自分が「なんかただの知り合いじゃないな」と感じていたら、もしかしたら「家族」と定義されるものに含まれるかもしれないなと思います。
中村さんが今気になっているのは、世界最小の○○
──日出男は「実は土星人だった」という意外すぎる一面を持っていますが、中村さんにも「世間の人にはあまり知られていなけど、実はこんな一面があります」といったことはありますか?
意外な一面かぁ、自分では思いつかないです。例えば、どんなことがあったら意外ですか?
──私が思う中村さんの意外なところは……(と、考えること数秒)そんなにないです。
あははは(笑)。なのにそれを聞くって、俺どうすりゃいいの。
──実は毎日プロテインを飲んでいるとか?(担当編集)
飲んでないよ。それに俺、すぐに言っちゃうからな。みなさんから見たら、何が意外な一面なんだろうね。
──では、話題を変えまして。今日は「fumufumu news」のマスコットキャラクターで、アンゴラウサギの“フムッフィー”も連れてまいりました。中村さんは生き物にお詳しいので、何か一言、お願いします!
アンゴラウサギにしては目が出ているね。もっと耳とか毛で隠れているでしょ。
──そうなんです。諸事情により、この子はちょっと耳が短くて……。でも、すぐにその動物の特徴が出てくるとはさすがです! そんな中村さんが、最近気になっている動物を教えてください。
「サビイロネコ」っていう、世界最小のネコ科動物がいるんです。ちょっと調べてみてください。
──(担当編集にスマホで調べてもらった画像を見て) 本当に小さいんですね! 成長してもずっとこの大きさのままなんですか?
そうそう。ネコ科の最大はアムールトラなんだけど、この子は手のひらサイズなんです。僕が見た映像では、どこかの密林みたいなところに生息していたので、きっと虫とか小動物を獲っているんだろうね。
ネコ科の動物は世界中に分布しているから、やっぱりそれだけ優秀な能力があるんですよ。あの身体すべてがハンターとしての能力ですし、世界中のいろいろな気候の場所や生態系に対応できるのは「種」としてすごく強いじゃないですか。だからすごくおもしろいなって思います。
(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/有村蓮、ヘアメイク/Emiy(エミー)、スタイリスト/戸倉祥仁(holy.))
【Profile】
●中村倫也(なかむら・ともや)
1986年12月24日生まれ、東京都出身。最近の主な出演作に、ドラマ『石子と羽男』(TBS系)、映画『ハケンアニメ!』、配信ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』(Prime Video)、 舞台『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』『ケンジトシ』など。現在、『ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪』(NHK Eテレ/ナレーション)が放送中。7月期の連続ドラマ『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)で主演を務める。
【Information】
●映画『宇宙人のあいつ』絶賛公開中!
監督、脚本:飯塚健
出演:中村倫也、日村勇紀、伊藤沙莉、柄本時生ら