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臼井孝の「大人ポップス聴き語り」

昭和の歌謡曲から平成・令和のJ-POPの時代まで、時を超えて語り継がれる名曲を創りあげてきたアーティストや作家などのMusicmanにスポットを当て、懐かしい歌も知らなかった歌もじっくり聴いてみたくなるようなインタビュー・コーナーです。

芸能

少年隊・錦織一清が歌って語る“昭和歌謡”、 名曲「池上線」の郷愁に耐えきれず「この沿線に越すのは諦めた」

SNSでの感想
錦織一清さん。たびたび現場を爆笑の渦に巻き込むユーモアセンスに脱帽! 撮影/伊藤和幸
目次
  • 昭和歌謡は「日本の文化財」、今後は洋楽カバーやブルースも作ってみたい
  • 今回のアルバム『歌謡 Style Collection』は実質、週間トップテン級のヒットに
  • 錦織は柳ジョージ大好き! 「For Your Love」「青い瞳のステラ」への熱い思い
  • 「五月のバラ」は年をとってから歌ったからこそ、味わい深さが増したのかも
  • 『池上線』の歌詞が重く切なすぎて、周辺エリアに住むことを断念(笑)

 2020年末に植草克秀とともにジャニーズ事務所を退所した少年隊・錦織一清。退所後は、それまで以上に精力的に活動の場を広げており、この1年間でも書籍2冊の刊行に加え、演出を手がける舞台『サラリーマンナイトフィーバー』『垣根の魔女』の上演や制作発表を実施。さらに、今夏にはパパイヤ鈴木との音楽ユニットFunky Daimond 18(ファンキー・ダイヤモンド・ワン・エイト)としての活動も開始する予定だ。

 そして、'23年4月には自身初のソロ・カバー・アルバム『歌謡 Style Collection』を発表。近年、シティポップとしてキラキラのサウンドに注目が集まる昭和ポップスだが、彼が今回選んだものは、人々の哀愁や切なさがにじんだ純然たる歌謡曲の世界で、選曲を見ただけで、流行に便乗した安易な制作でないことがわかる。

 そこで、今回は全3回にわたって、全10曲の聴きどころを錦織本人に語ってもらうことに! まずは、アルバムを制作した経緯から尋ねてみた。

昭和歌謡は「日本の文化財」、今後は洋楽カバーやブルースも作ってみたい

「“歌手まがい”(笑)なことをやりたかったんですよ。実は、少年隊として歌っているときも、自分の中ではなんとなく踊りのついでに歌っているようで、当時、自分のことを“歌手”と言われることが照れくさくて。

 僕自身、もっとも耳になじんでいるのが1970年代の歌謡曲なんです。当時は有線放送を流しているお店も多くて、レコードを持っていなくても知っている曲が多かった。昭和歌謡は、日本の文化財だと思っています。コード進行などはロシア民謡風で哀愁があり、そういう心寂(うらさび)しい部分も大好きで、大切にしていきたいんですよね

 錦織が少年隊としてデビューした'85年末は、まだJ-POPという言葉もなかったが、彼はそのころから'70年代の歌謡曲が好きだったという。

若いころにラジオ番組をやっていたときも、自分が好きなので、2時間にわたる生放送の最後にいつも歌謡曲をかけていました。舞台でご一緒した大先輩の中尾ミエさんなどは、昭和歌謡を歌っていても実はスタンダードジャズが得意だったりするので、そういうルーツをカバーするのもアリ。ですが、僕の場合はそういった技術はないし、シンガーソングライターでもないから、今ひとりで歌うのであれば、歌謡曲だけやってもいいんじゃないかって思ったんです

 ちなみに、錦織は'21年10月に4曲入りシングル『Cafe Uncle Cinnamon』を発表し、同作にはイギリスのバンド、スタイル・カウンシルによる'84年のヒット曲「My Ever Changing Moods」をカバーするなど、これまでも洋楽への造詣の深さをインタビューなどでも示している。そういった選択肢はなかったのだろうか。

「『歌謡 Style Collection』が評判となって、これから自由度が増してきたら、洋楽カバーも作ってみたいですね。(今作を聴いた)同年代の知り合いからは、“今度はブルースで作ってくれ”とかリクエストもありました」

錦織は「同世代が自分の歌を聴いて喜んでくれるのはやっぱりうれしいですね」とはにかむ 撮影/伊藤和幸

今回のアルバム『歌謡 Style Collection』は実質、週間トップテン級のヒットに

 また、選曲基準についても尋ねてみた。通常、カバーアルバムが制作される際は、ライトなリスナーに向けて、ヒット曲で固められることも多いのだが、本作では「あずさ2号」(狩人)「ラヴ・イズ・オーヴァー」(欧陽菲菲)、「ブルースカイ ブルー」(西城秀樹)といった誰もが知るヒット曲から、「池上線」(西島三重子)、「東京HOLD ME TIGHT」(桂銀淑)など、知る人ぞ知る隠れ名曲まで選曲されていることを挙げると、

「ジャニーズに入る前に聴いていた懐かしい曲もありますし、カラオケで歌っていた曲もあります。当時、歌を歌うのはカラオケBOXではなく、主にスナックとかでした。若いころ、そういうお店に飲みに行っても、少年隊の歌は(メロディーが重なる部分があるなど)ひとりでは歌いにくいということもあって、他の方の曲を歌っていたんですよ(笑)」

 とのこと。確かに、収録曲にある「五月のバラ」(塚田三喜夫 ほか)「忘れていいの」(谷村新司・小川知子)は、カラオケでのヒット曲という感じがする。続けて錦織は、

「今作のファンクラブ限定盤にはカラオケ(Instrumental)も付いているのですが、友人の話によると、最近のストリーミングサービスは、(ボーカルの音量を調節して)歌詞を表示しながら曲を流して、セルフカラオケも楽しめるんですよね? ビックリしました

 と教えてくれた。とはいえ、完全にボーカルが取り除かれるわけではないので、こだわりの演奏を楽しみたい方には限定盤CDをおすすめしたい。なお、本作の担当ディレクターによると、ファンクラブでの注文は約3200枚あったらしい。こちらはオリコン集計対象外だったが、一般流通盤の1週目の売り上げ1286枚(週間順位33位)を合算すると約4500枚で、実は初登場でトップテン級にヒットしていることも強調しておきたい。

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