「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして」がヒットするも、さらに高みへ
そして、続くSpotify第4位は、3rdシングルの「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして」。本人が出演する「グリコ・セシルチョコレート」CMソングに起用され、前2作で知名度が上がってきたこともあって、『ザ・ベストテン』やオリコンなど、多くの音楽ランキングで初のトップテン入りとなることが多かった。このレコード・ジャケットでは、“-Dreaming Girl-”の文字が小さく添えられている感じだからか、ランキング番組では「恋、はじめまして」と表示されることが多かったが、正式タイトルはどうなのだろうか。
「私たちの間では『Dreaming Girl、恋はじめまして』と読んでいました。これは、まりやさんが作ってくださった中で、スタッフの人気がいちばん高かったんですよ。だから、有希子ちゃんの存在が知れ渡ったときの勝負作として取っておこうと最初の段階から決めていました。ランキング番組で初めてベストテン入りして、周りも喜んでいました。でも、彼女は超絶前向きだったので、その成績で満足することはなかった気がします」
岡田がただ前向きなだけでなく、周囲を納得させる仕上がりまでもっていく点にも、國吉はいつも驚いていたという。
「有希子ちゃんは本当に忙しくて、レコーディングでもらえる時間がだいたい3時間しかなくて。その短時間で2曲か3曲を仕上げる必要があったんです。そのほとんどが、その日初めて歌うものだったのに、その中で歌の意味をきちんと解釈してくれる。解釈を間違うと、いくら音程がよかったとしても、曲が曲として聴こえない恐れもあるんですよ。でも、彼女の場合はそれがほぼありませんでした」
また、竹内まりや作品はアルバム曲からも、第6位に学生らしい青春ポップスの「憧れ」、第7位にオトナっぽいミディアム・バラードの「ロンサム・シーズン」と、2曲が上位にランクイン。國吉自身も、「デビュー2年目にして、この振り幅で歌えるのがすごい」と語る。
「二人だけのセレモニー」作詞家は新人を起用、攻めた作風に
そしてSpotify第5位には、4thシングル「二人だけのセレモニー」がランクイン。これも、明るい雰囲気だが転調が多く、丁寧に歌おうとするとその難しさに気づく。
「彼女の曲を、カラオケ向けに歌いやすくしようとかは、まったく意識しなかったですね。むしろ、“歌えるものなら、歌ってみろ”という感じで、自由に作りました(笑)」
本作は、尾崎亜美が作曲を担当しているが、作詞は本作がデビュー作となる夏目純。まったくの新人をヒットアイドルのシングルに起用するというのは、大英断と言えるだろう。
「尾崎亜美さんが、ご自身のラジオ番組のハガキ職人さんだった夏目さんに興味をお持ちになって、歌詞を書かせてみたのです。他にも、第17位にある『ソネット』の吉沢久美子さんも、NHKの合唱コンクールで書かれた歌詞が面白かったので、依頼しました」
本作はデビュー1年目の最後のタイミングということもあってか、学校の卒業と少女からの脱皮をかけた内容になっていて、意外に攻めた作風にも感じられる。それでもエレガントに聞こえるのは、岡田の歌唱と、松任谷正隆の編曲など制作力によるものだろう。
「楽曲を依頼するときは、最初にコンセプトを丁寧に説明するのですが、できあがってきた作品については、あまり介入しないようにしています。なので、こうした表現が自然に出たんじゃないですかね」