少年隊×阿久悠は意外と1曲のみ。本アルバムはすべて“お酒の邪魔をしない曲”

 そして8曲目は、尾崎紀世彦が1971年7月に発表した「さよならをもう一度」。こちらも当時はオリコン最高2位、累計40万枚以上の大ヒット曲だが、“尾崎紀世彦=「また逢う日まで」”のインパクトが強烈すぎて、リアルタイム世代以外は、知らない人が多いかもしれない。別れをテーマにしつつ、メジャー調でスケール感のあるバラードという点では、「五月のバラ」とも共通している。

「『また逢う日まで』は(カラオケの取り合いになるから)歌えないけれど、『さよならをもう一度』は、比較的隠れがちな名曲でしょ? 阿久悠先生の歌は、例えば沢田研二さんだと『酒場でDABADA』とか『カサブランカ・ダンディ』とか、好きなものが多いですね。どういうわけか少年隊では、あまりご縁がなかったのですが」

 少年隊としては、'88年にドキュメンタリー映画『燃える白球』の主題歌として作られた「夏の名前」(作詞:阿久悠、作曲:筒美京平、編曲:戸塚修。『少年隊 35th Anniversary BEST』の完全生産限定盤のみに収録)の1曲のみだが、改めて聴くと、錦織の感情をこめた歌唱と、存在感が強い阿久悠の言葉は相性抜群な気がする。

 9曲目以降の解説はインタビュー第3弾にとっておいて、ここでは本作のおすすめの聴き方を尋ねてみた。

「このアルバム全10曲は、すべて“お酒の邪魔をしない曲”です。だから、酒場で聴いてほしいですね。でも、バーのCDプレイヤーでかけてもらう、っていうのはちょっと違って、偶然入った、“ここ、ボラれるんじゃないの?”って雰囲気の店に入ったときにでも、その店のスピーカーから、うすーくどれか1曲が聴こえてきたらいいなと思っています」

 楽曲解説が進むにつれ、まじめな考察もキツめのジョークも深くなるがゆえに、どんどん話が長くなり、しまいには話しすぎて「今、なんでこの話をしているんだっけ」なんて、真顔で尋ねては周囲を笑わせる錦織。その二枚目半の饒舌(じょうぜつ)ぶりからは、とても各方面からリスペクトされる天才的パフォーマーとは想像できないほどだ。だからこそ、彼の解釈による歌謡曲カバーは、聴くほどに新発見のある作品となっている。

(取材・文:人音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)


【PROFILE】
錦織一清(にしきおり・かずきよ) ◎1965年生まれ、東京都出身。小学生のときにジャニーズ事務所に入所。アイドルグループ「少年隊」のリーダーとして一世を風靡。テレビドラマや舞台を中心に俳優としても活躍。'99年につかこうへい演出「蒲田行進曲」への出演をきっかけに、舞台演出にも積極的に関わるように。43年間、ジャニーズ事務所で活動したのち、'20年12月31日に独立。以降、'21年にシングル「Song for you」をリリース、'23年2月には舞台『サラリーマンナイトフィーバー』を主催・制作。'23年4月にはカヴァー・アルバム『歌謡 Style Collection』をリリースした。

【INFORMATION】

Funky Diamond 18(錦織一清/パパイヤ鈴木) LIVE TOUR 2023 PRIMEMAX

■2023年7月16日(日)名古屋・名古屋市公会堂 大ホール
17:00開場/18:00開演

■2023年7月17日(月/祝)大阪・サンケイホールブリーゼ
 16:00開場/17:00開演

■2023年8月8日(火)東京・恵比寿ザ・ガーデンホール
 18:00開場/19:00開演

■2023年8月9日(水)東京・恵比寿ザ・ガーデンホール
 18:00開場/19:00開演

■2023年8月18日(金)福岡・キャナルシティ劇場
 18:00開場/19:00開演

※公演詳細やチケット情報は公式HP内ニュースページにて→https://unclecinnamon.com/news/14218


◎錦織一清 公式HP→https://unclecinnamon.com/
◎錦織一清 公式Twitter→https://twitter.com/kazz_nishikiori
◎『歌謡 Style Collection』全曲視聴ができるOfficial Trailer→https://www.youtube.com/watch?v=PLFIalnlPs8