結果よりも作品のために自分がどう貢献できるかを考えるように
──2020年以降の工藤さんはドラマや映画など多くの作品に出演されています。着実に女優としての階段を駆け上がっている印象ですが、現在の状況に対してはどのように捉えていますか?
正直、“なんとかなった”という感じですね。18歳で「役者になります」と、大口たたいてグループを卒業したので、どうにもならなかったら……という不安もありました。
でも、いまはこうして、少しずつ役者として名前を知っていただけるようになって、作品をきっかけに興味を持ってくださった方が増えてきて恵まれているなと思いますし、私もここまで一生懸命に向き合ってきてよかったなと思っています。
──演技への向き合い方も変わったのではないでしょうか?
変わりましたね。いい意味で“自分が真ん中に絶対立ちたいです”みたいな気持ちがなくなったというか。
映画『のぼる小寺さん』(2020年)で初めて主演をさせていただいて、これからもそういう機会を増やしていかなくてはいけないと思ってはいつつも、いまは自分が何か結果を残すというよりも、“作品のために自分がどういうパーツになれるか”ということを考えるようになりました。
以前までは“正当派なヒロインをやりたい”という気持ちもあったんですけど、それだと私はこの作品を生かしきれない。そうであるなら、その横でヒロインの子をいじめるちょっと嫌なヤツを演じたほうが、自分の持っている技術や私の人間味みたいなものをすべて費やして、作品に貢献できるんじゃないかなって。
──それはこれまで大人数のグループで活動してきて、役者に転向すると決めたタイミングで生じた変化なのでしょうか?
そうだと思います。グループ時代は、いちばん目立ちたかったんですよ。それは卒業してから1年半ぐらいは続いていて、やっぱり主人公をやりたいとか、目立つポジションに立ちたいという思いのほうがあったんですけど、ありがたいことに、たくさんの素敵な作品に恵まれていくにつれて、それぞれの立ち位置で自分の魅力を最大限発揮することが大切なんだと気づきました。
あとは、作品にとって最高のスパイスやパーツになっている役者の先輩方を拝見していて、カッコよさを感じたことは大きかったです。
──ソロ活動はグループのときとは違った難しさがあると思うのですが、ソロとグループの違いはどのようなところに感じていますか?
何よりもひとりは心細いですよね。グループとは違って、すべてのことをひとりでやらなきゃいけない重圧みたいなものがあったので、最初はすごく寂しかったし、何でもネガティブに考えてしまうこともありました。
でも、それぞれ現場で出会った先輩の俳優さんだったり、同世代の俳優さんだったり、スタッフさんだったり、みなさんがいろいろなところで、私に声をかけて支えてくださって。アイドル時代のように“助けてほしいと言ったら、手を差し伸べてくれる人が自分の周りにはいるんだ”って思えてからは、ポジティブに考えられるようになりました。
──では、最後に「工藤さんにとって女優業とは?」というテーマでお話を聞かせてください。
もう本当に大好きなことですし、ずっと(この先も)やっているんじゃないかなと思います。演じることは、生活から切っても切り離せなくなってきていて、全部お芝居につながるんじゃないかと思って生きるようになっているんですよ。
しかもそれを苦だとはまったく思わないんです。プライベートで何か面白いことがあったり、ひとつ何かできるようになったりしたら、これを生かせるような役はないかなって探すと思いますね(笑)。
──役者への転向を決めたときから、モチベーションは変わっていないんですね。
変わらないですし、逆にやればやるほど欲も出てくるんです。お芝居にはゴールってたぶんないと思うので、これからも“もっと挑戦していきたい”って言い続けていると思います。
(取材・文/川崎龍也、編集/本間美帆)
【PROFILE】
工藤遥(くどう・はるか) ◎1999年10月27日生まれ、埼玉県出身。2018年より俳優として活動。以降、映画『のぼる小寺さん』(2020年)やドラマ『あせとせっけん』(MBS毎日放送)、『ロマンス暴風域』(MBS毎日放送)、『ダブル』(WOWOW)など、多くの映画やドラマに出演の他、MBSラジオ『若月佑美と工藤遥のMBSヤングタウン』ではパーソナリティも務める。2023年には映画『君は放課後インソムニア』への出演も控えている。Twitter→@Haruka_Kudo1027、Instagram→@haruka_kudo.official
【Information】
■映画『逃げきれた夢』
公開日:2023年6月9日(金)
出演:光石研、吉本実憂、工藤遥、杏花、岡本麗、光石禎弘、坂井真紀、松重豊
監督・脚本:二ノ宮隆太郎
配給:キノフィルムズ
(C)2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ