脚長=カッコいい、は昭和以降のイケメン基準?

 この店は竹雄(志尊淳)の職場だから、白い上着に黒のズボンというボーイ姿で竹雄が来る。女性客たちがざわついている。「よう似合っちゅうのー。シュッとしてる」と万太郎。「竹ちゃん、身体の半分が脚だわ」とりん。「半分以上じゃ」と万太郎。

 「身体の半分(またはそれ以上)が脚」という表現で、急に「今どき」感がアップした。「脚が長い=カッコいい」って、昭和以降の価値観では? そう思い、テレビの向こうがいつの時代なのか、ちょっと混乱する。

『らんまん』で竹雄を演じる志尊淳 撮影/齋藤周造

 私の認識では、日本における「脚長俳優第1号」は石原裕次郎さんだ。1956年に映画『太陽の季節』でデビューしたとき、脚が長いと話題になった。私の生まれる前のことだが、「芸能界の基礎知識」として知っているのだ。ちなみに「顔が小さい第1号」は小泉今日子さん(1982年デビュー)ではなかろうか。山口百恵さん(1980年引退)のちょい下である私だが、「中3トリオ」の時代から、3人の顔のサイズが論じられた記憶がない。キョンキョンはすぐに「顔が小さい」人になった。カッコいいの尺度は、時代が連れてくるのだと思う

 もちろんそんなことは『らんまん』制作陣もわかっているわけで、「竹ちゃん、脚長」はあえて入れたのだろう。「『らんまん』は、ちょいちょい今どきを入れてきますよ」と示すのが目的だと思う。なぜ、そんなことをする必要があるかというと、万太郎だ。生活能力はまるでなく、植物だけをひたすら愛する。そのキャラを今日的に理解するため、あえて「今」を入れる作戦だと思う。