東京大学赤ちゃんラボ監修のバラエティ豊かなコーナー
──『シナぷしゅ』は、監修に東京大学赤ちゃんラボの開一夫(ひらきかずお)教授が入られているんですね。
トライアル放送から、開先生に監修をお願いしていました。開先生はとても柔軟な方で、「トライアンドエラー。やってみて軌道修正していったらいいんじゃないの」と、いつも応援してくれます。放送を見て「ここがよかったよ」と褒めてくださったり。2022年11月の歌(つきうた)の『さんごdeタンゴ』は、開先生の発案でした。赤ちゃんに聴かせてみたいから作ってみよう、と考えてくださいました。
──ほかに、開先生からはどんなアドバイスやコメントをいただいたんですか?
打ち合わせをしたときに、「赤ちゃんの集中力はマックスで3分ももたないと思うよ」と教えていただきました。ならば1〜2分のショートコンテンツを段積みにして本編尺にしようと、今の構成になっています。
いろんなモノが倒れる「どてっ」というコーナーがあります。先生いわく、低月齢の赤ちゃんにも、なんとなく“物理の感覚の種”ってあるんですって。突然倒れるはずのないモノが、ぱたって急に倒れるのは、赤ちゃんなりにおかしい、だから面白い。「理屈ではなく赤ちゃんの感覚でわかることだから、『どてっ』はすごいコンテンツだよ」と褒めていただきました。
「どてっ」のように、倒れるはずのないモノが倒れるといった、“裏切り”を見せてあげると、赤ちゃんの注意を引くことができます。開先生からのアドバイスをコンテンツづくりのヒントにしています。
──裏切りやハッと注意を引くことは、『シナぷしゅ』の映像にも表れていますよね。
最初のころ、先生に映像やテロップの色を相談したことがありました。そのとき、すべては「緩急」だ、と。原色のところにパステルが紛れ込んでくればそっちを見るし、逆もまた然り。だから、一辺倒にならないように緩急をつけなさい、と教えていただきました。
だから『シナぷしゅ』のコンテンツを見ても、質感がバラバラなんです。実写があって、クレイアニメもあって、2Dのアニメーションに手描きもあります。赤ちゃんを飽きさせず、感覚で捉えられるように、ショートコーナーをバランスよく配置しています。
──30分の放送にいろいろな要素が詰まっているんですね。
ショートコンテンツが積み上がっている『シナぷしゅ』は、セレクトショップのような感じです。その中から「好きなものを選んでね」という気持ちです。赤ちゃんにも個性があり好みもそれぞれ異なります。「うちの子はこのコーナーが好き」「今はこの歌が好き」と、好きなものを選んで見てほしいです。本当に“親心”で作っているコンテンツです。
──では、赤ちゃん番組を作るにあたって、気をつけていることはありますか?
「男の子が青で女の子が赤」「お料理をするのはお母さん」というような表現をしないように気をつけています。0〜2歳向けの番組には、言葉による説明はありません。でもだからこそ、赤ちゃんが視覚的に捉えたときに“刷り込み”にならないよう、固定概念の基礎を作ってしまわないように。コツコツ積み重ねだと思うんですが、大事なことなのかなと思いながらやっています。
あとは、Eテレと同じことをしてもつまらないので、そこは意識しています。単純に「打倒Eテレ!」だとはまったく思っていなくて、「Eテレも見て、シナぷしゅも見る」が最高だと思っています。
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後編は、番組へ寄せられる視聴者の声から気づいたこと、映画化へ込めた飯田さんの想いも伺います。
【後編→『シナぷしゅ』プロデューサーが語る“0〜2歳児向け映画”へのこだわり「赤ちゃんも社会の一員だと伝えたい」】
(取材・文/鈴木ゆう子)
●『シナぷしゅ』
毎週 月曜~金曜 あさ 7:30~8:00(テレビ東京系列6局ネット)
●『ウタぷしゅ』※『シナぷしゅ』で人気のオリジナルソングを集めたスペシャル番組。
隔週 金曜 夕方 5:30~5:55(テレビ東京ローカル)
●『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』
5月19日よりユナイテッド・シネマ豊洲、新宿ピカデリーほか公開中。