結婚至上主義の平成までと、令和の結婚の立ち位置
かつて、恋愛ドラマの最終回では、“だいたいのカップルが結婚していた”という時代がありました。というか、恋愛ドラマというのは恋するふたりが結婚にたどり着く“まで”を描いた作品が多かった。
だけど、2020年代あたりからは、結婚をゴールとしない描き方が増えてきました。例えば、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系/以下『逃げ恥』)なんかは、その最たる例です。
同作では、第1話にして森山みくり(新垣結衣さん)と津崎平匡(星野源さん)が結婚(愛のない契約結婚ではありますが)。全11話を通して、結婚したあとのドタバタ劇が描かれていきました。
いまの時代は特に、結婚がゴールじゃないんですよね。結婚したからといって、一生安泰なわけじゃないし、むしろ増える負担が多いかもしれない。
相手への愛があれば、不安になったりヤキモチを妬(や)いたりと、面倒な感情がつきまとう。それなのに、永遠に愛が続く保証はない。だからこそ、最初から愛のないメリット婚にどこか憧れを抱いてしまうのでしょうか。
結婚に夢や幻想を抱かない現代婚
現在放送中のドラマ『王様に捧ぐ薬指』(TBS系)も、『逃げ恥』と同じく、メリットのある契約結婚をテーマにした作品です。
ヒロインの羽田綾華(橋本環奈さん)は、契約金の1000万円で実家の家計を助けるために、新田東郷(山田涼介さん)は、経営が傾いている式場を立て直すために、結婚を決めました。
「いまの時代、結婚に希望なんて誰も抱いていません。年収は上がらないのにもかかわらず、物価は高騰。家庭を持つことが負担だと感じる人も多い。コロナを経て、盛大な結婚式を挙げる人も激減した」
第1話で、東郷が言っていたセリフです。本作を視聴する前は、『花より男子』(TBS系)をほうふつとさせる元祖・シンデレラストーリーっぽい! と思っていたので、このセリフでその印象が180度変わりました。
『王様に捧ぐ薬指』は、ただ恋愛のキラキラしたところだけを切り取った夢物語じゃない。いまの時代にマッチした、令和だからこそ誕生したラブストーリーなのだと。
おそらく、『やまとなでしこ』(フジテレビ系)が放送されていた2000年代なら、契約結婚をテーマにした作品って、ここまで流行(はや)らなかったと思うんですよね。
「結婚=幸せの象徴」というイメージはまだまだ残っていたし、神野桜子(松嶋菜々子さん)のように、「玉の輿(こし)に乗れば一生安泰!」と思っている人が多かったから。